Research Results 研究成果
窒素 (N) は核酸やアミノ酸、タンパク質に含まれ、生命を構成する上で必須の元素である。窒素は大気中に窒素ガス (N2) として豊富に存在しているが、不活性ガスとよばれるほど反応性に乏しく、人間が直接窒素源として利用することはできない。したがって生命活動を維持する上で、窒素ガスを還元して利用可能なアンモニアを合成する反応の開発は非常に重要である。今回、九州大学先導物質研究所の吉澤一成教授らの研究グループと東京大学大学院工学系研究科の西林仁昭教授らの研究グループは、窒素分子が配位した鉄窒素錯体を新規に分子設計・合成し、それを触媒として用いて常圧の窒素ガスを直接アンモニアへと変換することに成功した。さらに反応条件によって窒素ガスから選択的にヒドラジンが生成するというこれまでに例がない触媒反応をみいだした。
本研究の成果は、現法のハーバー・ボッシュ法に代わり得る次世代型の窒素固定法であり、今後の窒素固定触媒開発の指針となると期待される。
本研究成果は、2016年の7月20日の「Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)」のオンライン速報版で公開されました。
鉄窒素錯体による窒素ガスからのアンモニア及びヒドラジン合成
窒素固定酵素ニトロゲナーゼの活性部位の構造
アンモニア及びヒドラジン合成反応の推定反応機構