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燃料電池の電極を原子レベルで観察し、理論的に明らかにする ―原子分解能の電子顕微鏡観察に基づく化学反応の動的過程の解明―

2019.04.26
研究成果Physics & ChemistryMaterialsTechnology

 燃料電池の電極や排ガス浄化触媒の活性はナノメートルスケールでの「界面」によって大きく決定されます。近年の電子顕微鏡技術の発展により、きれいに成長させたモデル触媒や電極の界面の原子レベルでの構造が少しずつ明らかにされていますが、実用界面の構造がどのようになっており、実用界面においてどのように活性が発現しているかが課題として残されていました。
 今回、九州大学稲盛フロンティア研究センター古山 通久教授(現国立研究開発法人物質・材料研究機構/信州大学)、同 劉 淑生(現国立研究開発法人産業技術総合研究所)、同 サハ レトン(現東北大学)、九州大学工学研究院 松村 晶教授、東京大学生産技術研究所 梅野 宜崇准教授らの共同研究グループは、エネファームに用いられている固体酸化物形燃料電池の実用電極系を対象として研究に取り組み、下記のブレイクスルーを実現しました。

1)電極反応サイトとなる界面構造を原子レベルで初めて観察
2)観察された界面構造に基づき大規模・長時間系の反応ダイナミクスの理論解析を実現
3)反応サイトは一次元的ではなく固体内も含めた三次元的に広がっていることを解明

 原子レベルでの電子顕微鏡観察像に基づく電子状態や安定性に関する理論解析はこれまでにも報告されてきましたが、化学反応の動的過程の理論的解析は初めての報告です。
今後、高度な計測科学と理論科学を実践的に融合した研究を様々な対象にも展開することで、高効率なエネルギー・環境技術の実現につなげて行きたいと考えています。

(参考図)(a)原子分解能電子顕微鏡(HAADF-STEM)による反応場の観察像、(b)原子分解能電子顕微鏡像に基づき構築されたシミュレーションモデル、(c)反応ダイナミクスシミュレーションにより明らかとなった反応経路

研究者からひとこと

今回の成果は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業CREST(2011年12月~2018年3月)の長期にわたる支援で実現されました。構造が複雑な実用電極系の活性サイトを電子顕微鏡で観察することも大変でしたが、大規模な理論計算のための高精度のパラメータを決定する点に最も時間がかかりました。高精度パラメータの決定は東京大学・梅野先生との共同研究ではじめて実現できました。

研究に関するお問い合わせ先

古山 通久 九州大学稲盛フロンティア研究センター 教授(現国立研究開発法人物質・材料研究機構エネルギー・ 環境材料研究拠点/信州大学先鋭材料研究所)
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