Research Results 研究成果

原始卵胞卵の維持機構に物理的圧力が関わることを解明 ~卵子の寿命制御への応用が期待される画期的な成果~

2019.06.27
研究成果Life & Health

 九州大学大学院医学研究院の永松剛助教、林克彦教授らの研究グループは、生命の永続性を担う卵母細胞の維持機構として物理的圧力がかかわることを明らかにしました。
 卵子形成過程において卵母細胞は出生直後に数が決まっており、限られた数の原始卵胞卵という状態で保持されています。この原始卵胞卵を周期的に活性化して排卵に至ります。しかしながら、これまで原始卵胞の維持と活性化を制御するメカニズムについては不明な点が多くありました。本研究では、原始卵胞卵の維持には細胞外基質による外的環境が重要であるという知見を基盤として、原始卵胞卵の維持には物理的な圧力が重要であることを明らかにしました。実験的に圧力を付加できる装置を用いて培養を行ったところ、加圧下培養により原始卵胞卵の静止状態が維持されることが分かりました。これと同時に、非常に興味深いことに、原始卵胞卵はその核を回転させていることに気が付きました。そしてこの核の回転を止めると原始卵胞卵の活性化が促進されることが明らかとなりました。さらに、物理的圧力と核回転との関係を調べたところ、原始卵胞卵は卵巣皮質において加圧条件下のもとその核を回転させることで休止期を維持するという新しいメカニズムを明らかにすることができました。この成果は生殖期間の制御の可能性を示しており、将来的な不妊治療への応用が期待できます。
 本研究成果は2019年6月26日(水)14時(米国東部夏時間)に国際学術雑誌「Science Advances」に掲載されました。なお、本研究は文部科学省科研費18H05545の支援を受けました。

(図1:本研究成果の概略図)
原始卵胞卵は物理的圧力下で核を回転させ、転写因子FOXO3の核外移行を抑制することで、その静止期を保っている。

研究者からひとこと

たくさんの人々の協力のもと行った一連の実験結果を論文として発表することができ、うれしく思っています。今後も何か新しいことが見つけられるように努力していきたいと思います。

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