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研究成果

公開日:2019.09.03

腸内細菌叢の異常が神経性やせ症の病態に関与
―新たな栄養療法の可能性―

研究成果 医歯薬学

 神経性やせ症は、ダイエットなどを契機に発症して、極度の低体重を呈する病気です。この病気は、有効な治療法が限られており、病態の解明や新たな治療法の開発が喫緊の課題となっています。これまでの研究で、神経性やせ症では腸内細菌叢(※1)に異常があることが知られていましたが、その異常が病態にどのように影響するかについては不明でした。
 この問題を検討するため、九州大学病院の波夛伴和助教、九州大学大学院医学研究院の須藤信行教授の研究グループは、東海大学医学部の感染症学教室、精神科学教室と共同研究を行いました。同グループは、無菌マウスに神経性やせ症女性患者または健常女性の糞便を移植して、ヒト型の腸内細菌叢をもつ人工菌叢マウス(やせ症型マウス、健常型マウス)を作製しました。無菌アイソレーター(※2)内で、これらのマウスの体重増加率を経時的に測定し、行動特性を評価しました。その結果、やせ症型マウスは、健常型マウスと比べて体重増加が不良であり、不安様行動が高いことが分かりました。また、やせ症型マウスでは、バクテロイデス属というグループの腸内細菌が減少しており、同じグループの腸内細菌を投与すると不安様行動は正常化しました。
 神経性やせ症の低体重期では、1)食物効率が低い(体重増加のために多くの食物摂取を要す)、2)精神症状(強い不安や強迫性)を合併することが知られています。今回の研究結果は、これら神経性やせ症に特徴的な病態の一端を明らかにするとともに、体重増加を目的とした新たな治療法の開発に寄与するものです。
 本研究成果は、2019年8月26日(月)に米国内分泌学会雑誌「Endocrinology」でオンライン公開されました。なお、本研究は科研費:新学術領域研究(16H06404)、基盤研究B(16H05278)、挑戦的萌芽研究(16K15413)の支援を受けて実施しました。

左図:4週齢の体重を100% としたときの
   体重増加率(下の数字は週齢)
  ⇒「やせ症型マウス」は体重が増えにくい
右図:不安様行動を評価する[ガラス玉覆い
   隠し試験](※3)で隠した個数
  ⇒「やせ症型マウス」は不安様行動が高い

無菌アイソレーター: マウスを微生物や寄生虫から隔離した環境で飼育するための装置です。吸排気装置にそれぞれ高性能フィルターを用い、完全に無菌の状態を保つことができます。

ガラス玉覆い隠し試験(Marble-burying test):マウスの不安様行動(特に強迫行動)を評価する方法です。敷き詰めた床敷きの上に置いた20個のガラス玉を、20分間に覆い隠した個数を数えます。数が多いほど、不安様行動(強迫性)が高いと評価します。

研究者からひとこと

ヒト型の人工菌叢マウスを作製する際、凍結糞便ではなく新鮮糞便を使用しました。その結果、マウスの腸内細菌叢が、凍結糞便を用いた場合と比べ、ドナーの腸内細菌叢に近似しており、よりヒトに近い動物モデルを作製することができました。

研究に関するお問い合わせ先

九州大学病院 助教 波夛 伴和

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