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Research Results 研究成果
九州大学大学院薬学研究院の増田隆博 助教、津田誠 教授、井上和秀 理事・副学長らの研究グループはこれまでに、神経のダメージで発症する慢性的な痛み(神経障害性疼痛)の原因として、ミクログリアという細胞で増えるP2X4受容体が重要であることを発表してきました。この受容体は細胞外にある物質、アデノシン三リン酸(ATP)で刺激されますが、ATPがどの細胞からどのような仕組みで細胞外へ放出されるのかは長年の謎でした。今回、研究グループはATPの放出に関わるタンパク質「VNUT」に注目して研究を行い、脊髄後角神経にあるVNUTがATPの放出と神経障害性疼痛に関与することを世界で初めて明らかにしました。実際に、脊髄後角神経のVNUTを作り出せないように遺伝子を操作したマウスでは、ATPの放出と、神経損傷後の痛みが弱くなっていました。この研究成果は、研究グループが2003年に神経障害性疼痛に対するP2X4受容体の重要性を発見して以来、10年以上も謎であった、ミクログリアのP2X4受容体を刺激する仕組みを明らかにしたもので、慢性疼痛メカニズムの理解が大きく前進し、痛みを緩和する治療薬の開発への応用が期待されます。
本研究は、英国科学誌 『Nature Communications』 オンライン版に2016年8月12日(金)午前10時(英国時間)に発表されました。
神経を損傷すると脊髄後角のミクログリア細胞が活性化状態となり,P2X4受容体タンパク質を作り出します。この受容体は脊髄後角神経から細胞外へ放出されたATPによって刺激されます。そのメカニズムにVNUTというタンパク質が関与しています。VNUTはヌクレオチドトランスポーターでATPを神経の中の小胞内に貯蔵する働きをします。その小胞が神経終末の膜と融合し,小胞内のATPが細胞外へ放出されます。脊髄後角神経から放出されたATPはP2X4受容体に作用することでミクログリアを刺激し,神経を興奮させる物質を放出します。それが神経に作用して痛みを引き起こします。
本研究結果によって、「慢性疼痛を引き起こす脊髄の細胞外ATPはどこからどうやって供給されるのか?」という世界中の疼痛・ATP研究者が長年抱えていた疑問に答えることができました。また、本研究で慢性疼痛の発症に関与することが明らかになったVNUTというタンパク質が痛みを緩和する治療薬の開発へ応用されることを期待しています。(増田隆博)