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カルボン酸の新たな触媒的活性化法およびラジカル機構による酸化反応を開発~カルボン酸を原料とした医薬品などの合成応用へ期待~

2020.02.21
研究成果Life & HealthPhysics & ChemistryEnvironment & Sustainability

 医薬品等の機能性分子中に数多く見られるエステルやアミドといったカルボニル基の原料として、カルボン酸は入手性・安定性・変換反応の多様性の観点から理想的な構造をもつ有機酸の一つです。さらに、近年では新たに医薬品などの原料としての利用も広まりつつあり、より多様な化合物を簡便に合成するためにカルボン酸の効率的な分子変換技術の開発は重要な研究課題です。
 カルボン酸を原料として反応を行う際に、従来法ではカルボン酸特有の酸性のために化学量論量の外部塩基が必要であり、より温和な条件で行うことのできる合成手法の開発が望まれていました。また古典的なイオン型反応を補完しうるラジカル機構を経由する触媒系は達成されていませんでした。このような背景のもと、九州大学大学院薬学府博士課程1年の田中津久志大学院生、薬学研究院の矢崎亮助教、大嶋孝志教授の研究グループは、世界に先駆けて化学量論量の外部塩基を必要としない、2種類の触媒を組み合わせることによるラジカル機構のカルボン酸の酸化反応※の開発を行いました。本研究では詳細な反応機構解析により、私たちの身の回りにありふれた鉄とアルカリ金属の2種類の金属の相乗効果によるカルボン酸の活性化機構を明らかにしました。本機構により、本反応ではケトンやエステル、アミドといったカルボニル化合物の共存下におけるカルボン酸の選択的な酸化反応を達成しました。本成果により、身の回りにあふれたカルボン酸を原料とした医薬品などへの効率的な合成応用が期待されます。以上の研究成果は、アメリカ化学会が出版する国際誌「Journal of the American Chemical Society」に2020年2月13日付けオンライン版(DOI:10.1021/jacs.0c00727)に掲載されました。
 ※酸化反応:有機化学の最も基本的な反応の一つで、分子が電子を失う化学反応のこと。今回はカルボン酸に酸素が結びつく反応。

(参考図)ラジカル機構によるカルボン酸の触媒的酸化反応の概要。化学量論量の外部塩基を必要としないカルボン酸の活性化およびラジカル機構によるカルボン酸の酸化反応は世界初である。また、本反応は類似の構造を有するエステルやアミドといったカルボニル化合物の存在下においてもカルボン酸のみを反応させることに成功した。

研究者からひとこと

カルボン酸の新規触媒的活性化法として、またラジカル機構によるカルボン酸の変換反応の基盤技術として、本研究が化学の進歩に貢献できるとうれしいです!今後カルボン酸のさらなる効率的な分子変換プロセスへの応用が期待されます。

論文情報

Chemoselective Catalytic α–Oxidation of Carboxylic Acids: Iron/Alkali Metal Cooperative Redox Active Catalysis ,Journal of the American Chemical Society,
10.1021/jacs.0c00727

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