Research Results 研究成果

歯周病菌感染は全身の脳老人斑成分を脳内輸入させる

歯周病によるアルツハイマー型認知症関与を解明する新しい発見 2020.07.03
研究成果Life & Health

 九州大学大学院歯学研究院の武 洲准教授と大学院歯学府博士課程4年生の曾凡(ソ ハン、日本政府奨学金留学生)の研究グループは、中国北京理工大学生命学院の倪軍軍(ニイ ジュンジュン)准教授(元九州大学助教)らとの共同研究により、歯周病原因菌であるジンジバリス菌(Pg菌)を全身に慢性投与することにより、正常な中年マウスの脳外で産生される脳老人斑成分であるアミロイドβ(Aβ)が脳内に取り込まれることを初めて発見しました。Pg菌を3週間連続で投与すると、中年マウスの血液脳関門を構成する脳血管内皮細胞周囲の脳実質において、Aβが増加し、記憶障害が誘発されることを突き止めました(参考図1)。今回の発見はPg菌の全身投与が中年マウスの肝臓においてAβ産生を誘発することを明らかにした同研究グループの報告(2019/11/14九大プレスリリース  https://www.kyushu-u.ac.jp/f/37543/19_11_14_01.pdf)を発展的に実証したものであり、Pg菌が全身に感染することによって末梢炎症組織でAβを誘発するとともにAβが脳内に取り込まれることを示した初めての成果です。この研究は歯周病によるアルツハイマー病の新たな関与メカニズムを示しており、歯周病の予防ならびに治療によって、アルツハイマー病の発症と進行を遅らせることが大いに期待されます。
 本研究は日本学術振興会科学研究費(JP16K11478、JP16H05848、JP17K17093)および九州大学OBT研究センタープロジェクト経費の支援を受け、研究成果は2020年6月16日(火)(日本時間)に、Wiley社国際学術誌の「Journal of Neurochemistry」にオンライン公開されました。

(参考図1)全身へのPg菌の投与によるマウスの脳血管内のRAGEの発生と脳血管周囲の脳実質内にAβ1-42が局在的に増加した様子。図の赤は血管内皮細胞を、緑はRAGEとAβ1-42を、青は細胞核を示す。

研究者からひとこと

歯周病菌感染は歯茎など炎症組織で脳内老人斑成分を誘導すると同時にその成分の脳内への輸入を促すことに大変驚きました。アルツハイマー型認知症の予防に口腔ケアはとても重要です。

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