Research Results 研究成果

高さだけでなく堰やダムの構造も重要?ウナギは46メートルの滝を登っていた

ウナギが上りやすい川づくりへの貢献に期待 2020.07.08
研究成果Life & Health

 九州大学大学院生物資源環境科学府博士課程2年の松重一輝大学院生、安武由矢大学院生、同大学院農学研究院の望岡典隆准教授、北九州市立自然史・歴史博物館の日比野友亮学芸員の研究チームは、鹿児島県の網掛川での調査結果をもとに、海から上ってきた天然のニホンウナギ(以下ウナギ)が高さ46 mの龍門滝を越えて滝の上流まで分布することを明らかにしました。
 ダムや堰は、海で産まれた天然のウナギが河川内の生息地へ移動することを妨げるため、本種の減少を招く要因のひとつとされています。これまでの研究では、ダムや堰がウナギの上流への移動を妨げる程度は堤体の高さのみを基準に評価されており、龍門滝の高さはウナギの上流への移動をほぼ完全に阻むとされる値でした。しかし、今回の研究によってウナギは龍門滝を登って比較的頻繁に上流へ移動していることがわかりました。龍門滝の壁面には細かい亀裂がみられ、湿り気があってコケ植物が繁茂していました。小さいウナギは凹凸のある湿った壁をよじ登ることができるため、龍門滝は小さいウナギがよじ登るのに一定程度適した構造であったと考えられます。
 今回の研究によって、ダムや堰がウナギの上流への移動を妨げる程度を評価するには、堤体の高さ以外に壁面の凹凸構造なども重要であることが示唆されました。つまり、落差の小さい堰でも構造次第ではウナギの上流への移動を大きく阻害するかもしれませんし、今回のようにその逆もあり得ます。今後、高さ以外の要因にも注目して本種の遡上を妨げる構造物を検出して魚道の設置などを行うことで、水産重要種であるウナギの減少を食い止められると期待されます。本研究の一部は鹿児島県ウナギ資源増殖対策協議会の支援を受けて行われました。

(参考図)鹿児島県内の河川で夜間に垂直の壁面をよじ登るウナギ稚魚の様子。今回の研究では龍門滝をよじ登る様子を直接観察することはできませんでしたが、ウナギはこのように滝の岩肌をよじ登って上流へ移動したと考えられます。

研究者からひとこと

今回の研究を通して、条件が整えば46 mのほぼ垂直の壁面をよじ登るというウナギの驚くべき能力が明らかにされました。今後、ウナギが滝を登る様子を直接観察できれば、よじ登り行動の成功率、登る道筋、要する時間などを調べて、ウナギの遡上生態の解明につなげたいと思います。

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