Research Results 研究成果

新型コロナウイルス感染症流行下の心理的不安・予防行動と性格の関連性を解明

感染対策や心理的ケア対策の立案の重要な判断材料になる可能性 2020.07.16
研究成果Humanities & Social SciencesEnvironment & Sustainability

 九州大学持続可能な社会のための決断科学センター錢 琨(せん こん)助教と同大学院理学研究院矢原徹一学術研究員(名誉教授)は、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言発出後の2020年4月8日にオンライン調査を実施し、日本全国から1,856名の有効回答を集め、市民の予防行動・心理状態と性格因子との関係について調べました。その結果、神経質傾向が強い人ほど予防行動レベルが高く、一方でストレス・不安・抑うつスコアが高く、他人の努力への評価や医者への信頼度が低いことがわかりました。また、勤勉性傾向が強い人は予防行動レベルが高いが、感染リスク、他人の努力、自身の仕事への影響を低く評価する傾向がありました。また、協調性傾向が強い人はストレス・不安スコアが低く、生存の確信、他人への評価が高い傾向がありました。以上の結果から、予防行動や心理状態には性格による大きな個人差があり、個人差に配慮した感染症対策と心理的ケアが必要だと示唆されました。
 本研究ではさらに、下図に示す多くの項目について調査し、性格・道徳・イデオロギーが回答者の心理状態・評価・健康状態・生活への影響などと複雑に関係していることを示しました。本研究は、日本における新型コロナウイルス感染症流行下の心理・行動と性格・道徳の関連性を系統的に調べた最初の研究として、2020年7月10日付けで国際学術誌PLOS ONEに掲載されました。
 オンライン調査はその後も週1回の頻度で継続され、6月中旬までに計10回実施されました。現在、10回分の時系列データをもとに、市民の精神的負担・予防行動や意識・生活への影響などが、10週間にどのように変化したかを分析中です。この分析結果は、個人差に配慮した感染対策や心理的ケア対策を立案するうえで、重要な判断材料となることが期待されます。

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研究者からひとこと

誰もが初めて経験する今回のコロナ禍、いまだに世界範囲で流行し、多くの人に災難をもたらしています。正しく恐れて、適切な行動に導くためには、人間の心理の役割が重要です。「Calm, Careful, Confident」。これは本研究を通じて、心理学の立場から提案するコロナ対策の3Cです。冷静に判断し、慎重に行動し、自信を保つこと。コロナとの長期戦に備えて、心を整えましょう。

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