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同一の細胞から複数のエピゲノム情報を同時に検出する技術開発に成功

公開日:2020.08.18

 

研究成果 医歯薬学

 九州大学生体防御医学研究所(大川恭行教授、原田哲仁准教授、前原一満助教)、東京工業大学科学技術創成研究院細胞制御工学研究センター(木村宏教授、半田哲也特任助教ら)、東京大学定量生命科学研究所(胡桃坂仁志教授、佐藤祥子特任助教)の研究グループは、少数の細胞からエピゲノム情報を取得できる「クロマチン挿入標識(Chromatin Integration Labeling: ChIL)法」に関する詳細な実験手法を発表しました。さらに、これまでの解析ではひとつのサンプルでは単一のエピゲノム情報しか取得できませんでしたが、今回、同一サンプルから複数のエピゲノム情報を同時に検出する技術(Multi-target ChIL: mtChIL)の開発にも成功しました。

 人体は、多様な30兆個の細胞で構成されています。多様な細胞は、数万種類の同一の遺伝子群(ゲノム)から、選択的に遺伝子を使い分けることで固有の機能を獲得します。この遺伝子の使い分けには、ゲノムDNAに結合するヒストンの翻訳後修飾や転写因子の結合により調節されています。このようなエピゲノム情報を解読することにより、種々の細胞内で使われる遺伝子と使われない遺伝子がどのように区別されるのかということを調べることができます。これらのエピゲノム情報は、発生や分化、がん化などの過程で変化するため、その全貌を明らかにし、調節機構を解明することで、人体の成り立ちや病態を遺伝子の選択性から理解することが可能になります。エピゲノム情報やその解析技術は、組織再生や幹細胞を用いた再生医療などの応用にも必要となるため、これまでも多くの国際プロジェクトによりエピゲノム情報の解読が進められてきました。
 しかしながら、少数の細胞を用いたエピゲノム解析は高度な技術が必要とされます。研究グループは、昨年、単一細胞レベルでエピゲノム情報を解読する世界初の高感度技術であるChIL法を発表しました。今回、この技術に関する詳細な実験手法を発表したことにより、広く研究者にこの技術が普及すると期待されます。さらに、研究グループは、様々なエピゲノム情報を同時に取得可能な発展型技術mtChILの開発に成功しました。従来の技術では1度の解析で単一のヒストン修飾あるいは転写因子の結合情報のみしか解析できないため、エピゲノム情報の本質である「組み合わせ」の解明には至っていませんでした。これまで個別にしか解析出来なかった因子の組み合わせの網羅的な解析が可能になることから、人為的な遺伝子操作技術の開発が期待され、遺伝子発現の破綻であるがん、特異的な遺伝子発現誘導が必要となる再生医療など多方面への応用が期待されます。

 本研究の成果は、科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業CREST「細胞ポテンシャル測定システムの開発」(研究代表者:大川恭行)、さきがけ「組織特異的ゲノム構造の再構築技術の開発」(研究代表者:原田哲仁)、文部科学省科学研究費新学術領域研究「遺伝子制御の基盤となるクロマチンポテンシャル、JP18H05527(領域代表者:木村宏)」などの支援により得られたものです。
 本研究成果は、2020年 8月 18 日(火)午前0 時(日本時間)に英国科学雑誌「Nature Protocols」で公開されました。

従来は複数のエピゲノム情報を個別で解析していたが(上図)、本法mtChILでは、同時に複数のエピゲノム情報を解析できる。

研究者からひとこと

これまでのエピゲノム解析は、1サンプル当たり1つの情報を得ることが一般的であったため、多数の因子を解析する場合の障壁となっていました。mtChIL法は、これまで解析ができなかった組み合わせ情報の解読が可能です。今後の国際プロジェクトでの活用等研究分野を劇的に発展させることを期待しています。

研究に関するお問い合わせ先

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