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圧力で熱電変換材料の大振幅原子振動をコントロール

 
~熱電変換の高効率化に道筋~

公開日:2020.10.02

 

研究成果 Physics & Chemistry Materials Technology

【本研究成果のポイント】
◆ 熱電変換材料(1)の高性能化をもたらす大振幅原子振動(ラットリング(2))の起源を解明。
◆ 新規熱電変換材料として期待される硫化銅鉱物テトラへドライト(3)において、加圧によりラットリングを増強させることに成功。
◆ 広島大学自然科学研究支援開発センター低温実験部で独自に開発した10万気圧までの超高圧比熱測定システムと、大型放射光施設SPring-8のビームラインBL02B1におけるダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧X線回折が本成果に大きく寄与。

【概要】
 広島大学自然科学研究支援開発センターの梅尾和則 准教授と同大学大学院先進理工系科学研究科の高畠敏郎 特任教授、九州大学大学院総合理工学研究院の末國晃一郎 准教授、筑波大学数理物質系 エネルギー物質科学研究センターの西堀英治 教授の研究グループは、熱電変換材料として期待される硫化銅鉱物テトラへドライトの低い熱伝導率をもたらす大振幅原子振動を圧力によって制御することに成功しました。
 テトラへドライト(Cu12-xTrxSb4S13、Tr:Mn、Fe、Co、Ni、Zn)は環境調和型の熱電変換材料として注目されています。この化合物では、三つの硫黄(S)原子が作るS3三角形中の銅(Cu)原子が面垂直方向に非調和大振幅振動(ラットリング)しているため、熱伝導率がガラス並みに抑制されていると考えられています。そのラットリングの起源として二つのモデル、(a) S3三角形のS原子がCu原子に及ぼす化学的圧力、(b) Cu原子に隣接するアンチモン(Sb)原子のもつ孤立電子(ローンペア)による静電気力、が提案され論争となっていました。
 本研究では、上記二つのモデルのどちらが妥当かを検証するため、圧力下でのラットリングの振舞いを調べました。そのために、テトラへドライトの3万気圧までの圧力下における比熱を、広島大学自然科学研究支援開発センター低温実験部で独自に開発した装置で測定しました。さらに、大型放射光施設SPring-8のビームラインBL02B1においてダイヤモンドアンビルセルを用いて測定した高圧X線回折により、結晶構造の圧力変化を調べました。その結果、比熱の温度変化から求めたラットリングを引き起こすのに必要なエネルギーが、加圧すると低下することが分かりました。このことは、加圧によりS原子がCu原子に及ぼす化学的圧力が高まると、より低いエネルギーでラットリングが起こることを示しています。また、その結果と結晶構造の圧力変化とを詳細に検討した結果、ラットリングの起源として(a)のモデルが妥当であることが証明されました。
 本研究の成果は、令和2年9月9日にアメリカ物理学会の学術誌Physical Review Bの速報版であるRapid Communicationsのオンライン版に掲載されました。

論文情報

Pressure induced quenching of planar rattling in Cu10Zn2Sb4S13 studied by specific-heat and x-ray diffraction measurements

著者名
*梅尾和則1、末國晃一郎2、高畠敏郎3、西堀英治4
(*責任著者)
1.広島大学自然科学研究支援開発センター
2.九州大学大学院総合理工学研究院
3.広島大学大学院先進理工系科学研究科
4.筑波大学数理物質系 エネルギー物質科学研究センター

掲載雑誌 Physical Review B、Rapid Communications
DOI 10.1103/PhysRevB.102.100302

 

研究に関するお問い合わせ先

末國晃一郎 総合理工学研究院 准教授