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地球上で2番目に硬い物質-立方晶窒化ホウ素-の生体応用に成功

公開日:2020.10.13

 

研究成果 工学

 美しい宝石として有名なダイヤモンドは、地球上で最も硬い物質です。しかしダイヤモンドは熱に弱く、酸素や鉄と反応しやすいという欠点があります。立方晶窒化ホウ素※1(c -BN)は、ダイヤモンドに次ぐ硬さを持ちながら、熱に強く、酸素や鉄との反応性も低いことから、高温大気中でも安定なうえ、鉄を含む材料の機械加工にも使えるという利点があります。しかし、高品質なc -BNの作製は困難だったため、産業への応用は遅れており、ましてや細胞や血液と接する生体環境への応用には至っていませんでした。

 九州大学大学院総合理工学研究院の堤井君元 准教授、物質・材料研究機構の松本精一郎 元研究員、ストーニーブルック大学(アメリカ)のミリアム・ラファイロビッチ 教授らの研究グループは、独自のプラズマ化学気相蒸着法※2によって高品質なc -BNを作製した後、プラズマ改質処理※3により表面結合状態※4を制御して得られる超親水性※5 c -BNが、ダイヤモンドさえも凌駕する優れた生体適合性※6を示すことを明らかにしました。本研究成果は、耐久性と生体適合性に優れた人工骨、人工歯根などのインプラントや生体情報センサーの開発に役立つものと期待されます。

 本研究成果は、2020年10月13日(火)(日本時間)にWiley-VCH社が発行する学術誌「Advanced Functional Materials」のオンライン版にて公開されます。本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)(JP18H01711)および最先端・次世代研究開発支援プログラム(GR080)の支援を受けました。

参考図

(a)プラズマ改質処理による高品質立方晶窒化ホウ素(c -BN)膜の超親水化とその後の細胞培養試験。
(b)超親水性c -BN膜上で成長した細胞。
(c)細胞成長時に生成した鉱物とエネルギー分散型X線分光スペクトル(リンPとカルシウムCaが含まれていることが分かる)。

研究者からひとこと

立方晶窒化ホウ素(c -BN)は硬いだけでなく、バンドギャップ※7が大きいという性質も有しています。私たちの独自手法による高品質c -BNは機械、電気・電子応用に寄与してきましたが、ようやく生体応用も切り拓くことが出来ました。研究の姿勢は流行を追わず、マイペースですが、今後も出口を見据えた確かな技術を生み出したいと考えています。

論文情報

タイトル:Biocompatible Cubic Boron Nitride: A Noncytotoxic Ultrahard Material
著者名: Jason H. C. Yang, Kungen Teii, Chung-Chueh Chang, Seiichiro Matsumoto, and Miriam Rafailovich
掲載誌: Advanced Functional Materials
DOI:10.1002/adfm.202005066

【用語解説】

※1 窒化ホウ素:
窒素とホウ素から構成される化合物で、主要な結晶としてグラファイトの構造をもつ六方晶窒化ホウ素と、ダイヤモンドの構造をもつ立方晶窒化ホウ素が存在。
※2 プラズマ化学気相蒸着法:
放電の一種であるプラズマを用いて原料ガスから高エネルギーの原子・分子やイオンを形成し、それらの化学反応を利用することにより、基材に材料を蒸着する手法。
※3 プラズマ改質処理:
プラズマを材料表面に照射することより、材料表面の構成元素や結合状態を変化させる処理。
※4 表面結合状態:
材料内部と異なり材料表面では原子間の結合が途切れるため、表面には材料の構成元素とは異なる元素が結合することが出来る。この最表面の元素の種類や結合の仕方。
※5 超親水性:
水を滴下すると水が薄く広がる性質。
※6 生体適合性:
生体内に入れても拒絶反応が起こらず、異物として認識されない性質。
※7 バンドギャップ:
半導体の価電子帯の上部から伝導帯の下部までのエネルギー差。バンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体を用いると、一般に高性能な電子デバイスを作製可能。

研究に関するお問い合わせ先

総合理工学研究院 堤井 君元 准教授

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