Research Results 研究成果
【要点】
・グアノシン4リン酸(ppGpp)は、細菌の栄養飢餓応答時のシグナル物質として発見されたが、動物細胞では半世紀にわたり未確認だった。
・ショウジョウバエやヒト細胞からのppGpp検出に世界で初めて成功し、その量が発生段階に応じて変化することを明らかにした。
・動物細胞内にもppGpp代謝系が存在し、発生の調節や環境適応に用いられていると考えられる。
東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の伊藤道俊大学院生(研究当時)と増田真二准教授らの研究グループは、山形大学の及川彰教授、九州大学の川畑俊一郎教授、東京都立大学の朝野維起助教らのグループと共同で、細菌のセカンドメッセンジャー(用語1)として知られるグアノシン4リン酸 (ppGpp) を、後生動物(用語2)の細胞から検出することに世界で初めて成功した。
細菌は、外部環境変化に応じてppGppを合成することで代謝を最適化し、栄養飢餓応答や抗生物質耐性などを向上させている。本研究では、後生動物では世界で初めて、ショウジョウバエでのppGppの検出に成功した。さらにppGpp分解酵素を欠損したショウジョウバエは野生型の約7倍のppGppを蓄積していることを明らかにした。ショウジョウバエ中のppGpp量が発生段階に応じて大きく増減することから、動物細胞内にはppGpp代謝系が存在しており、発生の調節や環境適応に用いられていると考えられる。
今回の発見によって、ppGppが動物細胞にも存在することが確認されたことで、今後は、その機能に関する研究の進展が期待される。研究成果は11月Y日発行の「Communications Biology(コミュニケーションズ・バイオロジー」に掲載された。