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山間部の風力資源予測に対する大気安定度の影響解明に成功

公開日:2020.12.23

 

研究成果 Physics & Chemistry

九州大学応用力学研究所の内田孝紀准教授は、ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社(JRE)と共同研究(風力発電における風況予測の精度向上に関する研究)を実施し、山間部の風力資源予測に対する大気安定度の影響解明に成功しました。

一般的に、地表面近くの空気層は大気境界層と呼ばれ、鉛直方向に温度(密度)が変化する成層状態を形成しています。特に夜間においては、上空に向かって温度が高くなる(密度が小さくなる)安定成層流が形成されます。この安定成層流が複雑な地形を過ぎる場合には、大気中の温度変化が無い昼間の中立成層時には見られない様々な波動現象や流動現象が出現します。そのため、安定成層時に形成される風況特性を正確に予測し、把握することは、風力エネルギーの有効利用、大気汚染物質の移流拡散現象予測、森林や農作物の風害対策などに極めて重要です。

そこで、内田准教授はJREとともに、典型的な複雑地形を対象とし、中立成層時と安定成層時における数値風況シミュレーションを実施しました。1年間の仮想データに基づいて2MW級の大型風車の経済性評価を行い、大気安定度が与える影響について考察を行いました。両ケースにおける風車の設備利用率の比較を行った結果、安定成層時の設備利用率は中立成層時の2.775倍も増加することを明らかにしました。国内外の風力業界でこれまで実施されてきた経済性評価は、中立成層時のみを対象としたものが大半でしたが、今回の研究により、実際の気象条件に照らし合わせ、大気安定度の状況を考慮することで、より正確な風力資源予測が実現可能であることを示しました。

本研究成果は、2020年12月16日付で国際学術雑誌「Energies」に掲載されました。

 

(参考図)
本研究で得られた数値風況シミュレーションの一例
(中立成層時と安定成層時において、No2風車の周辺に出現する流れパターンが大きく異なる)
/応用力学研究所が所有するスーパーコンピュータSX-Aurora TSUBASAによる大規模並列計算

研究者からひとこと
ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社(JRE)との共同研究は現在も継続中です。本研究で開発したシミュレーション技術は洋上ウィンドファームの風力資源予測にも適用化です。日本版の大規模陸上/洋上ウィンドファームの実現を目指します。

論文情報

タイトル:
著者名:
Takanori Uchida and Susumu Takakuwa
掲載誌:
Energies 2020, 13(24), 6638
DOI:
10.3390/en13246638

研究に関するお問い合わせ先

応用力学研究所 内田 孝紀 准教授