Research Results 研究成果

ロジウムを凌駕する高耐久性な多元素ナノ合金排ガス浄化触媒

―地金価格9割カットでNOx還元高活性と高耐久性の両立を実現― 2021.03.10
研究成果Materials

 京都大学大学院理学研究科 北川宏 教授、草田康平 同特定助教(研究当時、現:京都大学白眉センター特定准教授)、信州大学先鋭領域融合研究群 先鋭材料研究所 古山通久 教授、名古屋大学大学院工学研究科 永岡勝俊 教授、九州大学大学院工学研究院 松村晶 教授らの研究グループは、自動車排ガス(1)浄化に対して最も高い性能を有するロジウム(Rh)を凌駕する、高耐久な多元素ナノ合金触媒の開発に成功しました。Rhは産業上極めて重要な戦略元素であり、窒素酸化物(NOx)(2)を唯一浄化できることから、産出量の9割以上が自動車の排ガス浄化用触媒に使用されています。しかしながら、昨今の世界的な自動車排ガスのさらなる規制強化(ユーロ6からユーロ7(3)へ)のために、稀少なRhの需要が非常に高まり、2021年1月には過去最高の1グラム約76,000円を記録しました。このような背景の下、自動車工業界では、より安価でRhに匹敵する性能を持つ新しい物質の開発が強く求められています。本研究グループは過去にRhよりも資源量が豊富なパラジウム(Pd)とルテニウム(Ru)を初めて原子レベルで混ぜることに成功し、自動車排ガスの主成分であるNOxの浄化に対する触媒活性がRhを凌駕することを発見しました。しかし、このPdRuナノ合金は高温下での排ガス浄化反応では構造が崩れ、活性劣化を引き起こすことが問題でした。今回、このPdRuに第3の元素を加えることで配置エントロピー(4)を増大させ、高温での固溶体(5)構造を安定化させた種々のナノ合金の開発に成功し、PdRuイリジウム(Ir)ナノ合金がPdRuおよびRhよりも高活性かつ、高耐久性であることを発見しました。
 本成果は、2021年3月10日に独国の国際学術誌「Advanced Materials」にオンライン掲載されました。また、物質基本特許として「多元系固溶体微粒子及びその製造方法並びに触媒(国際出願番号PCT/JP2017/008058)」を出願中(US登録済:登録番号10639723)(出願人:京都大学)で、現在、複数の自動車・自動二輪製造メーカーと共同研究を進めています。

PdRuM固溶ナノ合金排ガス浄化触媒

研究に関するお問い合わせ先