Research Results 研究成果
九州大学基幹教育院の岡本剛准教授らのグループは、冷房の「風向設定」が、部屋の中に居る人の周囲の温熱環境だけではなく、その人の主観評価、心理応答、生理応答のそれぞれにも同時に影響を与えることを脳科学的に明らかにしました。
本研究では、温度設定を一定に保ったまま、人の顔付近に風が当たりやすい「直接風」と、風が当たりにくい「間接風」の2種類の風向設定を切り替えて実験しました。この風向設定は、三菱重工サーマルシステムズのAirFlex(注)によって行いました。
研究の意図を知らない学生19人に対し2種類の風向設定で実験を行った結果、間接風の方が顔の表面温度が高く(温熱環境)、体感温度・快適感が高く(主観評価)、心理時間が長い=負の感情を抑制する(心理応答)ことがわかりました。
さらに、生理応答に関しては、間接風の方が脳波の左前頭部のガンマ波とベータ波の振幅が低く、心電図の交感神経活動の指標が高いことがわかりました。左前頭部のガンマ波とベータ波の振幅が何を反映しているかについては諸説ありましたが、本研究では「冷房時に快適さとガンマ波とベータ波の振幅の低下」を初めて明確に関連付けることができました。一方、交感神経活動が高いことは、心身の活動の活発さを示すことが知られています。
本研究成果は、2021年4月14日14時(アメリカ東部標準時)にPLOS ONE誌にオンライン掲載されました。
(参考図)
実験の様子と直接風・間接風の設定イメージ(左)
快・不快の回答と左前頭部ガンマ波の結果(右)
直接風(濃い実線・▲)より間接風(薄い破線・○)の方が、快適で、左前頭部のガンマ波の活動が低いことが示された。ベータ波でも同様の結果が得られた。
(注) AirFlexについて 三菱重工サーマルシステムズ製の業務用パッケージエアコン。 天井埋込形4方向吹出し室内機(FDT)及び天井埋込形小容量4方向吹出し室内機(FDTC)には、業界初の風除け機構“AirFlex”付きパネルを採用した。従来、エアコンの風に直接当たりたくない場合には、吹出し口付近に風向調整板を現地オプションとして取り付けていたが、一度取り付けてしまうと簡単に外すことができず、また外観が悪くなるという問題点があった。 AirFlexでは風向調整板を内蔵したパネルの採用により、ユーザがリモコンを操作することにより開閉操作を可能とした。 それにより、風に直接当たりたくない場合は AirFlex を作動させ,反対に風に当たりたい場合は収納させ、吹出口ごとにその時々のユーザの好みに合わせた空調環境の実現が可能となった。 また、エアコン停止時には自動的に収納される美観にも配慮した機能・デザインが評価されAirFlex パネルは 2016 年度グッドデザイン賞を受賞した。 導入いただいたお客様からは「風が当たらなくなった」、「エアコンの風が気にならなくなった」、「冷房時に寒いと感じなくなった」等、評価いただいている。 |