Research Results 研究成果
九州大学大学院経済学府博士課程1年の三苫春香大学院生、同大学院経済学研究院の加河茂美主幹教授、近畿大学経済学部の永島史弥講師および国立環境研究所の南齋規介室長(PG総括)の研究グループは、インドの発電部門から発生するPM2.5由来の早期死亡者数を推計しPM2.5排出削減に重要となるサプライチェーン(※1)を明らかにしました。
消費者は家庭で直接電力を消費するだけでなく、モノやサービスを購入し、それらを生産する過程(サプライチェーン)で必要となる電力の生産を誘発することで、間接的にも電力を消費しています。本研究ではインドの主要なPM2.5排出源である発電部門を対象に、このような「間接電力消費」がどの国のどのようなサプライチェーンで起こっているのか詳細に分析しました。分析から、インドの発電部門から発生するPM2.5による早期死亡者数は約11万人であり、そのうち間接消費は約80%を占めることが分かりました。また、米や麦など穀物の農業部門を中心としたサプライチェーンは約1万3千人の早期死亡者数を誘発しており、建設部門を中心としたサプライチェーンに続いて2番目に多くの早期死亡者数を誘発していました。建設部門は需要の規模の影響が大きい一方で農業部門は灌漑用電気ポンプのための電力消費が大きい生産構造が大きく影響していることが分かりました。また中東地域への輸出向け生産も電力消費を通してインド国内の早期死亡者数に寄与しています。これまで穀物の生産に関しては、焼畑によるPM2.5排出が問題視されてきましたが、電力消費による間接的なPM2.5排出の観点からも重要であり、国内および海外の消費者が協力して削減に取り組むべきであるといえます。
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(16H01797, 20H00081)の支援を受けました。本研究成果は、6月7日(英国時間)にScientific Reports誌(2019 Impact Factor: 3.998)に公開されました。