Research Results 研究成果
大気中から二酸化炭素(CO2)を直接回収するDirect Air Capture(DAC)は、回収するCO2純度の低さが課題と言われていました。九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所/ネガティブエミッションテクノロジー研究センターの 辻 健 教授、藤川 茂紀 主幹教授、同大学高等研究院の 国武 豊喜 特別主幹教授、産業技術総合研究所の徂徠 正夫 研究グループ長、志賀 正茂 特別研究員は、膜分離を用いたDACで回収する低純度のCO2でも地中に貯留できることを提示し、大気中からCO2を削減しネガティブエミッションに寄与するコンセプトを構築しました。
CO2の利用や貯留(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)には高純度のCO2を用いるのが一般的ですが、そのような高純度のCO2をDACで回収するには多くのエネルギーを要します。特に火力発電所などで回収したCO2は窒素酸化物などの有害物質が含まれているため、CO2の純度を高くする必要があるとされていました。しかし、DACで回収されるCO2に含まれる不純物は環境に優しい大気物質(酸素や窒素など)であり、CO2の純度が低くても地中貯留できる可能性があると研究グループは考えました。
そこで、DACで回収した低純度のCO2を地中に貯留する可能性について、分子動力学シミュレーションなどを使って調べました。その結果、低純度CO2は高純度CO2に比べるとやや深い場所に貯留する必要があるものの、安全に貯留できることが分かりました。また、低純度CO2の地中貯留が可能になれば、大幅なCO2回収コスト低下が見込まれ、全体コストの低減にもつながります。
DACは大気中から直接CO2を回収するため、設置場所を選びません。つまり、砂漠や海洋プラットフォームなどで、DACと地中貯留を融合したCO2削減システム(下図)の設置が可能になると考えられます。さらに、今後CO2を資源として利用する時代が来れば、貯留したCO2を地中から回収・利用する道が開けます。今後は、この研究で構築したコンセプトを具現化するために、正確なコスト計算などを実施する予定です。
本研究成果は先月、国際誌「Greenhouse Gases: Science and Technology」に掲載されました。