Research Results 研究成果
生物は多くのキラル有機分子によって構成されており、そのほとんどは、鏡像異性体間で熱的な相互変換(ラセミ化)をおこさない炭素中心性不斉をもつキラル分子です。これに対して、鏡像異性体間で熱的に相互変換する動的キラル分子も存在し、それらには特異な生物活性や機能の発現が期待されます。
九州大学先導物質化学研究所の井川和宣助教、浅野周作助教、友岡克彦教授らの研究グループは、動的キラル分子の最も基本的な性質である立体化学的安定性(ラセミ化のおこりやすさ)を効率的に自動分析できるマイクロフローシステムの開発に成功しました。マイクロフローシステムでは数秒~数分間の高温加熱を精密に制御することができるため、数時間~数日間掛けて中低温度でバッチ容器を用いて行っていた従来法に比べて極めて迅速な測定が可能になりました。本マイクロフロー法とバッチ法は相補的であり、両手法を組み合わせて幅広い温度領域で分析することで、動的キラル分子の立体化学挙動をより精密に評価できるようになりました。
本研究は、日本学術振興会・基盤研究(S)「キラル分子を光学活性体として得る革新的手法DYASINの開発(20H05677)」の一環として行われました。また、本研究成果は2021年7月7日に「The Journal of Organic Chemistry」誌のオンライン版に掲載されました。
参考図