Research Results 研究成果
九州大学応用力学研究所の内田孝紀准教授は、九電工新エネルギー株式会社の協力の下、西日本技術開発株式会社および株式会社日立製作所とH27年度に共同研究を実施し、地形起因の大気乱流が商用大型風車の構造強度に与える影響の評価に成功しました。本研究で対象となった鹿児島県の串木野れいめい風力発電所には、日立製作所製の2MW商用大型風車が10基設置されており、東風が発生した際に10号機風車に風況起因の発電停止が多発することが実測データの解析から確認され、その原因として東側(直線距離で約300m)に位置する弁財天山(標高519m)の影響が示唆されました。そこで、10号機をターゲット風車にし、地形起因の大気乱流が風車の構造強度に与える影響について詳細に調査・研究を行った結果、東風が発生した際に、疲労荷重が最大値を示したことが分かりました。
これは、10号機の風車ブレード3枚の根元に電気式の歪ゲージを設置し、歪ゲージの測定値と風車運転基本情報(ナセル風向、ナセル風速など8項目)を50Hz(1秒間に50回)で同期計測するシステムを構築し、実測データを収集・解析したものです。また同時に、内田准教授が開発している数値風況診断技術RIAM-COMPACT®を用いて、上記の最大疲労荷重が発生している際の気流性状を明らかにすることに成功しました。今後は、3次元超音波風向風速計を風車ナセル上に、小型ドップラーソーダを10号機風車の周辺に設置し、さらに詳細な実風況観測を行い、地形起因の大気乱流が風車の構造強度に与える影響の定量化と、その予測手法の確立を目指します。我々が「産学連携」で一丸となって取り組む今回の共同研究は、風車の「重大事故」を未然に防ぎ、かつ陸上および洋上の大規模風力発電の適切な普及・拡大に大きく貢献することが期待されます。
H27年度に実施した共同研究の一連の成果は、12月1日(木)に科学技術館(東京)において開催される第38回風力エネルギー利用シンポジウムにて紹介する予定です。
メソ気象モデルWRF-ARWの計算結果、11月13日の9時40分、風車ハブ高さ(地上60m)における速度ベクトル図
風車設計・分析のためのガラードハッサン社(GH)のBladedソフトウェアによる空力弾性シミュレーションのイメージ図
3次元超音波風向風速計と小型ドップラーソーダの設置イメージ図
今後、陸上・洋上の大規模な風力発電を安全・安心に普及・拡大させるために、数値風況診断技術RIAM-COMPACT®を「コア技術」とし、風車メーカー、風力事業者、コンサルティング会社などと一丸になり、地形起因の大気乱流が風車に与える影響の解明を目指します。