Research Results 研究成果
近年の自動車への環境対策は自動車走行時の排出削減(例:排ガス規制、CAFE基準規制、HVやEVの利用促進)に焦点が当てられています。しかしながら政策決定者は製品使用時だけでなくライフサイクル全体での環境負荷削減に注力しなくてはなりません。
九州大学大学院経済学研究院の加河茂美主幹教授および大分大学経済学部の中本裕哉講師の研究グループは、「自動車の耐久性」と「新車と中古車の買い替え行動」の変化が自動車のストックとフロー、およびカーボンフットプリント(※1)に与える影響を明らかにしました。
自動車の寿命は、製造から廃棄までの生存期間に関する物理的寿命と、購入から買い替えまでの保有期間に関する経済的寿命があります。本研究ではこの2つの寿命分布を組み合わせることで、自動車の耐久性と新車・中古車の買い替え行動を組み込んだ包括的なカーボンフットプリントの分析のモデルを開発しました。さらに、日本の乗用車をケーススタディとした分析から物理的寿命、新車の経済的寿命、中古車の経済的寿命の10%の延長はそれぞれ自動車のカーボンフットプリントを30.7 Mt、26.4 Mt、5.2 Mt削減することを明らかにしました(図1)。
本研究では自動車の寿命延長がカーボンフットプリントの削減に寄与することを示しています。自動車の寿命延長に向けた具体的な方策として供給側には、修理が容易でより長く使用できる自動車の設計や部品、メンテナンス市場の活性化を通したアフターサービスの充実が重要です。需要側には燃費の優れた自動車の長期利用が求められます(図2)。
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(JP20K22124, JP20H00081)の支援を受けました。本研究成果は、8月24日(英国時間)にJournal of Industrial Ecology誌(2020 Impact Factor: 6.946)に公開されました。
図1. 自動車寿命延長に関する政策や行動
図2. 自動車寿命延長によるCO2削減