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妊娠中の高カロリー食が子どもの成熟後の肥満を誘発するメカニズムを解明!

 
〜オステオカルシン投与が肥満を予防〜

公開日:2021.10.29

 

研究成果 Life & Health

 九州大学大学院歯学研究院OBT研究センターの安河内友世准教授と福岡歯科大学口腔医学研究センターの平田雅人客員教授の研究グループは、妊娠中の母体の高カロリー食摂取が次世代の肥満や生活習慣病の原因になるメカニズムを初めて明らかにしました。
 今回の研究では、実験動物により、妊娠母体の過栄養が、仔の成熟後のエネルギー代謝異常や肥満に関与することならびにオステオカルシンがそれを回避することが動物実験により科学的に証明されました。人でも同様のことが起きている可能性が高いと思われます。
 母体の妊娠中の高カロリー食摂取は、仔の肝臓でグリコーゲンホスホリラーゼ(Pygl)遺伝子に異常なDNAメチル化※1が生じ、その発現を低下させることが分かりました。その結果、肝臓のグリコーゲンは分解されにくく蓄積します。通常は空腹時には肝臓のグリコーゲンが分解されて枯渇すると、脂肪が分解されてエネルギー源になりますが、妊娠中に高カロリー食を摂取していた母親の産仔では、グリコーゲン分解が起こりにくいため、脂肪が分解されにくく体脂肪が蓄積し、その結果として肥満やインスリン抵抗性※2を呈するようになります。さらに、研究グループは、妊娠母体が経口摂取するオステオカルシンが、Pyglの発現を増強させることで、産仔の肝臓のグリコーゲン代謝や肥満の改善作用をもつことを明らかにしました。
 本研究成果は、2021年10月19日に国際専門誌「Molecular Metabolism」でオンライン公開されました。

参考図

妊娠中に高カロリー食を摂取した母親マウスの産仔では、成熟後に肥満や糖・脂質代謝異常が現れた。これには、肝臓におけるPygl遺伝子のメチル化異常によるグリコーゲン分解異常が関与していた(左側)。一方、妊娠中のオステオカルシンの経口摂取は、Pyglの発現を上昇させ、グリコーゲン代謝を改善し、仔の肥満を予防した(右側)。

用語解説

※1 DNAメチル化
DNA鎖の塩基の炭素原子にメチル基修飾が生じる化学反応である。特に、転写制御を担うプロモーター領域がメチル化されると、その遺伝子の発現が抑制される。

※2 インスリン抵抗性
インスリンの効き具合が悪い状態を意味する。 すなわち膵臓からインスリンは血中に分泌されているにもかかわらず、標的臓器(骨格筋や脂肪組織)のインスリンに対する感受性が低下し、その作用が鈍くなっている状態を示す。

研究助成

本研究は、JSPS科学研究費補助金(JP17H01595、JP20H03854、JP19K10052、JP20K23114、JP18K09521)、公益財団法人三島海雲記念財団、公益財団法人新日本先進医療研究財団、公益財団法人ダノン健康栄養財団、および九州大学OBT研究センタープロジェクト経費の支援を受けて行われました。

研究者からひとこと
これまで、病気の原因は、主に遺伝や出生後の環境にあると考えられてきましたが、出生前(妊娠母体)の環境因子も、病気の発症に影響を及ぼすことが証明されました。妊娠期あるいは授乳期の栄養管理の重要性を医療関係者のみならず、多くの方に知っていただきたいと思います。

論文情報

タイトル:
著者名:
Tomoyo Kawakubo-Yasukochi, Ena Yano, Soi Kimura, Takuya Nishinakagawa, Akiko Mizokami, Yoshikazu Hayashi, Yuji Hatakeyama, Kenji Ohe, Atsushi Yasukochi, Seiji Nakamura, Eijiro Jimi, Masato Hirata 
掲載誌:
Molecular Metabolism 
DOI:
https://doi.org/10.1016/j.molmet.2021.101360 

研究に関するお問い合わせ先

歯学研究院 安河内 友世 准教授