Research Results 研究成果
アリやシロアリは生態系において極めて重要な位置を占めていますが、その多様化の背景には両分類群における真社会性の進化が大きく関係しています。また、真社会性の進化は、その社会に寄生(社会寄生)する昆虫の進化をもたらしました。世界で100科以上のさまざまな昆虫が、アリやシロアリとの共生関係を進化させています。
ハネカクシ科は世界で6万種以上が知られている大きな甲虫の一群で、その中でもヒゲブトハネカクシ亜科(科より1つ下の分類単位)は、中生代から爆発的な多様化を遂げ、土壌中から海岸、鳥の巣など、さまざまな環境へと適応してきました。同亜科はアリとシロアリという真社会性昆虫の巣へ居候(社会寄生あるいは偏利共生)する種が多く、こういった特徴は亜科内で多数回進化しています。
今回、約1億年前のミャンマー産琥珀の内部に見つかった本亜科甲虫の化石(新属新種:Mesosymbion compactus)について、九州大学大学院生物資源環境科学府博士3年の山本周平、九州大学総合研究博物館助教の丸山宗利、コロンビア大学研究員のJoseph Parkerの研究グループが分析したところ、形態的な特徴により、真社会性昆虫に対する世界最古の社会寄生の例である可能性が示されました。このことから、白亜紀に真社会性昆虫が出現したことはすでにわかっていますが、今回の発見により、その直後から社会寄生する昆虫が現れた可能性も示唆されました。
本成果は、2016年12月8日(木)午前10時(英国時間)に『Nature Communications』でオンライン公開されました。
今回見つかったミャンマー産琥珀内部のハネカクシ科甲虫の化石
(新属新種:Mesosymbion compactus)
主著者の山本周平君は学部1年生のときから私の研究室に出入りし、研究を開始しました。昆虫研究に対する情熱と新知見発表の能力の双方を兼ね備えた稀有な存在です。また、彼は幼少のときから化石にも興味があったそうで、今回の研究は彼の好きなこと両方を扱った研究の真骨頂といえましょう。(丸山宗利)