Research Results 研究成果

グローバルサプライチェーンの再構築がCO₂排出削減の鍵!

2022.01.05
研究成果Environment & Sustainability

グローバルサプライチェーン(※4)のイメージ

 COVID-19パンデミックの影響を受け、グローバルサプライチェーン(※1)の再構築が進む中、各国各産業は低炭素型のグリーンサプライチェーンを再構築していく必要があります。九州大学大学院経済学府博士後期課程1年の前野啓太郎大学院生(脱炭素エネルギー先導人材育成フェロー)、同大学院経済学研究院の加河茂美主幹教授および山形大学学術研究院(人文社会科学部主担当)の時任翔平講師の研究グループは、CO2排出ホットスポット(※2)を中心としたグローバルサプライチェーンの再構築が、カーボンフットプリント(※3)に与える影響を明らかにしました。
 本研究は、4つの産業連関分析手法を統合することで、「脱CO2排出ホットスポットシナリオ」に基づくサプライチェーンの再構築が、カーボンフットプリントに与える影響を分析する新しい研究フレームワークを開発しました。さらに、日本の自動車部門を対象としたケーススタディの結果から、当該サプライチェーンの再構築には、自動車のカーボンフットプリントを約6.5%削減するポテンシャルがあることを明らかにしました(表1)。また本研究は、再構築によるCO2排出変化について構造分解分析を行い、純CO2排出削減に最も貢献する部門(つまり、日本の自動車部門が優先的に再構築を進めるべき部門)を特定しました(図1)。
 本研究の結果は、サプライチェーンの上流部分、つまり「サプライヤーのサプライヤー」に至るまでの詳細なCO2排出管理の重要性を示すと同時に、より低炭素型の構造を持つサプライチェーンの再構築に向けた当該産業のCO2排出削減策・貿易政策を示唆しています。
 本研究は、九州大学 脱炭素エネルギー先導人材育成フェローシップ及び日本学術振興会 科学研究費助成事業(JP20H00081)の支援を受けました。また、本研究成果は、12月16日(英国時間)にEnergy Economics誌(2020 Impact Factor: 7.042)に公開されました。

表1(左) 日本の自動車サプライチェーンの 再構築による各国のCO2排出変化
図1(右) 再構築によるCO2排出変化(表1)の構造分解
図の青色棒グラフは、CO2排出ホットスポットとして特定された中国の各部門からの製品購入を行わないことによって生じるCO2排出減少効果を示しており、赤色棒グラフは、中国以外の他国において当該製品を代替生産することによって生じるCO2排出増加効果を示している。

用語解説

(※1) サプライチェーン:
完成品を生産するために直接間接的に必要となる原材料・部品等の供給網

(※2) CO2排出ホットスポット:
ある産業のサプライチェーンネットワークにおけるCO2排出集約的な産業群

(※3) カーボンフットプリント:
当該製品(例えば、自動車)の生産によって波及する、資源採掘、素材・部品生産、輸送などの各生産段階から排出される各国各産業のCO2排出量

(※4) グローバルサプライチェーン:
グローバルサプライチェーンとは、サプライチェーンの仕組みを国内にとどまらず、海外にある生産拠点も選択肢に入れて実施すること

論文情報

タイトル: CO2 mitigation through global supply chain restructuring
著者名: Keitaro Maeno, Shohei Tokito, Shigemi Kagawa
掲載誌: Energy Economics 
DOI: https://doi.org/10.1016/j.eneco.2021.105768  

研究に関するお問い合わせ先

経済学研究院 加河 茂美 主幹教授