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男性不妊症(無精子症)の原因の一端を解明:生物界で広く保存されたヒストンの異型種が精子幹細胞の機能に必須であった!

2017.01.18
研究成果Life & HealthPhysics & Chemistry

 加齢と共にいずれはなくなる卵子とは異なり、年を経ても精子は存在します。これは、精巣の中に精子の“もと”となる幹細胞が存在し、それが自分と同じ幹細胞を作り出す細胞分裂(自己複製)と、精子を作り出す細胞分化の両方の機能があるためです。この幹細胞の仕組みに何らかの異常が生じると、精子を作ることが出来なくなり最終的には無精子症となります。このたび、中部大学の上田潤助教、近畿大学の山縣一夫准教授、九州大学の原田哲仁助教らのグループは、マウスをモデルに精子幹細胞が分裂はするが分化に異常が生じて結果的に無精子症になるメカニズムを明らかにしました。しかも、科学的に大変興味深いことに、このメカニズムが酵母からヒトまで保存されている「ヒストン」と呼ばれるDNAに結合するタンパク質の精巣タイプによって制御されていることが分かりました。この精巣型のヒストンを失ったマウスは見かけ上全く正常に発育し健康でしたが、雄が無精子症となり、完全に不妊になることが明らかとなりました。さらに、このヒストンタンパク質とDNAの複合体の構造解析から、体細胞に存在する通常のヒストン-DNA複合体に比べて、その結合がやや弱いことが明らかとなり、この精巣だけで見られる特殊なヒストンの化学的性質が精子幹細胞から精子が形成されない原因であったと推測されます。
 本研究成果は、2017年1月18日午前2時(日本時間)に米国の学術誌「Cell Reports」(インパクトファクター:7.870)オンライン速報版に公開されました。

H3t遺伝子を欠損すると野生型(左)に比べて著しく小さい精巣となり、不妊となります(右)。

H3t遺伝子を欠損すると精子形成不全となり、精子が全くない無精子症を呈します(右)。正常だと精細管の中に生殖細胞がびっしりと存在しますが(左図)、H3t遺伝子を欠損すると生殖細胞が失われ、精細管の中がすかすかになります。

H3tに対する特異的抗体を用いた精巣切片の免疫染色画像。幹細胞(Plzf陽性細胞、赤色)にH3tタンパク質は発現しておらず、分化した細胞に発現しています(緑色)。

論文情報

Testis-Specific Histone Variant H3t Gene Is Essential for Entry into Spermatogenesis ,Cell Reports,
http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.12.065

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