Research Results 研究成果

胎児期の鉛と小児期早期の神経発達との関連

子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)について 2022.09.30
研究成果Life & Health

ポイント

  • エコチル調査の全国10万組の親子のデータを用いて、エコチル調査九州大学サブユニットセンターは、胎児期の鉛へのばく露[※1]と3歳までの神経発達の関連を調べました。
  • 妊娠中の母体血と出生時の臍帯血の鉛濃度は、これまでの報告と比べて非常に低濃度で、それらの濃度と1歳・2歳・3歳での神経発達遅延傾向(遅延が疑われること)に明らかな関連は認められませんでした。
  • 本研究は環境省の予算により実施しました。本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。

概要

 エコチル調査福岡ユニットセンター(九州大学小児科)助教の井上らの研究チームは、国立研究開発法人国立環境研究所(以下「国立環境研究所」という。)と共同で、エコチル調査の約10万組の親子のデータを使用して、胎児期の鉛へのばく露[※1]と3歳までの神経発達の関連について解析しました。その結果、妊娠中の母体血と出生時の臍帯血の鉛濃度と1歳・2歳・3歳での神経発達遅延傾向(遅延が疑われること)に明らかな関連は認められませんでした。なお、母親の認知機能検査が実施されていない、臍帯血の解析数が限られているなどの制約があり、更なる詳細な調査が必要です。
 本研究の成果は、令和4年9月12日付で、自然科学分野の学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。
※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。

用語解説

[※1] ばく露:私たちが化学物質などの環境にさらされることを言います。身体の表面から中に入ってくることは吸収などと呼び、ばく露とは区別しています。

論文情報

題名(英語):No association between prenatal lead and neurodevelopment during early childhood in the Japan Environment and Children’s Study
著者名(英語):Hirosuke Inoue1, Masafumi Sanefuji1,2, Yuri Sonoda1,3,Masanobu Ogawa4, Norio Hamada3,4, Masayuki Shimono5,6, Reiko Suga6, Shoji F. Nakayama7, Yu Taniguchi7, Koichi Kusuhara5,6, Shouichi Ohga1,3, Michihiro Kamijima8, The Japan Environment and Children’s Study Group9
井上普介1、實藤雅文1,2、園田有里1,3、小川昌宣4、濱田律雄3,4、下野昌幸5,6、
菅 礼子6、中山祥嗣7、谷口 優7、楠原浩一5,6、大賀正一1,3、上島通浩8、
JECSグループ9
1九州大学小児科、2佐賀大学小児科、3九州大学環境発達医学研究センター、4九州大学産婦人科、5産業医科大学小児科、6エコチル調査産業医科大学サブユニットセンター、7エコチル調査コアセンター、8名古屋市立大学大学院医学研究科環境労働衛生学、9グループ:コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンター長
掲載誌:Scientific Reports
DOI: 10.1038/s41598-022-19509-6