Research Results 研究成果

細胞の外側に柱状の構造体を発見、その形成機構を解明

2017.01.18
研究成果Life & HealthEnvironment & Sustainability

 細胞の外の環境がどのように構築されるのかについて、細胞外基質が足場を作っているということ以外多くは知られていませんでした。九州大学大学院医学研究院の佐藤有紀講師(戦略的創造研究推進事業さきがけ研究員(兼任))は、共焦点レーザー顕微鏡を用いた高精細イメージング解析から、細胞外基質のひとつであるフィブロネクチンが、血管の近傍の組織間隙に長く太い「柱」のような構造を形成することを発見しました。これまでの知見では、細胞外基質は細胞のごく近傍数µmの範囲内に蓄積するものと思われていましたが、フィブロネクチン柱は細胞から50µmも離れた場所にまで達することがわかり、この構造を作り出すメカニズムの解明に成功しました。
 フィブロネクチンは力学的要因によって重合を促進されることが知られています。我々は血管が脈動することで生まれる伸縮ストレスがフィブロネクチンの「柱」を形成させる力学因子であると予想し、血管形成阻害、心拍停止、局所的血栓誘導など様々な角度から実験を行い、血管の脈動がフィブロネクチン柱の形成維持に必須であることを明らかにしました。さらに本研究から、フィブロネクチンが近傍の細胞の糸状仮足とインテグリン受容体を介して相互作用し、細胞移動や分化に関わることがわかりました。本成果は、血管周囲のメカニカルストレス受容機構の解明に発展することが期待されます。
 本研究は、2017年1月17日 (火)正午(英国時間)に英国科学誌「Development」のオンライン版で掲載されました。

 細胞の外側に形成されたフィブロネクチンの柱(緑色)。この構造は、細胞の糸状仮足との相互作用と血管の脈動に起因する空間伸縮ストレスによって形成され、2つの離れた組織同士をブリッジする役割を担っている。

 フィブロネクチンの柱とその構造を作り出すしくみ

研究者からひとこと

 フィブロネクチンの「柱」は高等脊椎動物胚の太い血管の近傍に特異的に形成されます。柱構造の発見自体も初めてのことですが、血管が力学的ストレスの発生源ではないか?この仮説を思い付いた時が最もエキサイトした瞬間でした。その後、この仮説の証明のために脈動の要因となる血流をどう操作するかが実験で最も苦慮した点です。

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