Research Results 研究成果
ポイント
概要
「社会的ひきこもり(以下、ひきこもり)」は社会参画せずに6 ヶ⽉以上⾃宅にとどまり続ける状態であり、ひきこもり状況にある⼈(以下、ひきこもり者)は国内110 万⼈を越えると推定されています。コロナ禍になり、外出⾃粛やオンライン授業・在宅ワークの普及により、従来ひきこもりと縁のなかった⼈々でも病的なひきこもりに陥りやすい状況下にあり、ひきこもりの予防および⽀援法・治療法の確⽴は国家的急務です。九州⼤学病院では世界初のひきこもり研究外来を⽴ち上げており、ひきこもりの⽣物・⼼理・社会的理解に基づく⽀援法開発を進めています。その⼀環として、2018 年には6 ヶ⽉間のひきこもり傾向を評価できる25 項⽬からなる⾃記式質問票「Hikikomori Questionaire-25;以下HQ-25)」を⽇⽶共同開発しました。HQ-25 はすでに6 カ国語以上の⾔語に翻訳され、世界中で活⽤されつつあります。
今回、⽇本学術振興会(JSPS)・⽇本医療研究開発機構 (AMED)等の⽀援により、九州⼤学⼤学院医学研究院の加藤隆弘准教授・⽇本⼤学⽂理学部⼼理学科の坂本真⼠教授・オレゴン健康科学⼤学のアラン・テオ准教授らの国際共同研究チームは、ひきこもりリスクの早期発⾒によるひきこもり予防システム構築のために、直近1 ヶ⽉間のひきこもり傾向を簡便に把握できる⾃記式質問票(1 ヶ⽉版ひきこもり度評価尺度One Month version of Hikikomori Questionaire-25;以下HQ-25M)の開発に成功しました。
2022 年3 ⽉、未就労の⽇本⼈成⼈男性762 名を対象としてHQ-25M をオンライン調査として実施したところ、ひきこもり傾向が⾼いほどHQ-25M のスコアが有意に⾼いことを確認し、HQ-25Mの予備的妥当性を確認しました。今後、⼥性を含む様々な⼈々に実施することで、信頼性・妥当性のさらなる検証を⾏うとともに、国外への普及も進めてゆきます。
ひきこもりは、2022 年に⽶国精神医学会が発⾏した国際的な精神疾患診断マニュアルDSM-5TRにおいて「hikikomori」として新たに掲載され、⽇本発の社会現象として世界中でその存在が注⽬されています。世界中でhikikomori 者の急増が懸念されるコロナ禍・ポストコロナの時代、今回の⾃記式質問票HQ-25M が職場や学校などで広く活⽤されることで、ひきこもりリスクの⾼い⽅々の早期発⾒が実現し、病的なひきこもりに⾄ることを予防するための重要なツールとなることが期待されます。
本成果は、2022 年11 ⽉30 ⽇(⽔)に、⽇本精神神経学会が発⾏する国際学術誌「Psychiatry and Clinical Neurosciences」に掲載されました。
参考
ひきこもり研究ラボ@九州⼤学
九州⼤学では、2013 年に⼤学病院内に専⾨外来を⽴ち上げ、国内外の医療研究機関やひきこもり⽀援団体と連携し、ひきこもりの多⾯的理解に基づく具体的な⽀援法の開発を進めています。上記リンク先のホームページに、今回のHQ-25M はじめ各種ひきこもり評価ツールやご本⼈・ご家族向けの⽀援に役⽴つ情報を掲載していますのでご覧ください。
論文情報
掲載誌:Psychiatry and Clinical Neurosciences
タイトル:One month version of Hikikomori Questionnaire-25 (HQ-25M): Development and initial validation.
著者名:Takahiro A. Kato, MD, PhD*, Yudai Suzuki, PhD, Kazumasa Horie, MA, Alan R. Teo, MD, MS, Shinji Sakamoto, PhD* (*Corresponding authors: Kato & Sakamoto)
DOI:10.1111/pcn.13499
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