指定国立大学法人【特別企画】

vision 2030

総長cross 若手研究者 座談会

総長×若手研究者 座談会

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総長×若手研究者 座談会

みんなで考える「これからの九大」

「総合知で社会変革を牽引する大学」実現のために策定したビジョン。
そこには具体的に何が必要で、私たちは何をしていけば良いのだろう?
石橋総長と若手の研究者で率直な意見交換を行いました。

みんなで考える
「これからの九大」

「総合知で社会変革を牽引する大学」実現のために策定したビジョン。そこには具体的に何が必要で、私たちは何をしていけば良いのだろう?石橋総長と若手の研究者で率直な意見交換を行いました。

長津 結一郎 准教授

芸術工学研究院

長津 結一郎

准教授

専門はアート・マネジメント、文化政策学。障害のある人などの多様な背景を持つ人々の表現活動に着目した研究を行っている。東京藝術大学助手を経て、2016年4月より現職。

VASCONCELLOS VARGAS DANILO 准教授

システム情報科学研究院

VASCONCELLOS
VARGAS DANILO

准教授

専門は汎用人工知能(AGI)、認知アーキテクチャなど。ロバスト性と適応性を持つ次世代の人工知能(AI)の開発を目指し研究を行っている。九州大学助教を経て、2020年1月より現職。

加藤 百合 助教

薬学研究院

加藤 百合

助教

専門は生化学、薬理学。現在は、COVID-19の重症化の予防・治療に資する創薬の研究に取り組んでいる。岡山大学特任助教を経て、2020年1月より現職。

藤井 秀道 准教授

経済学研究院

藤井 秀道

准教授

専門は日本経済論、環境経済学。持続可能な社会に向けたイノベーションの創出や、環境保全と経済発展を両立させるために必要な政策・制度を研究。長崎大学准教授を経て、2018年4月より現職。

石橋 達朗 総長

九州大学

石橋 達朗

総長

専門は眼科学。九州大学医学部卒業。米南カリフォルニア大学研究員、九州大学大学院医学研究院眼科学分野の教授などを経て、2014年から4年間、九州大学病院長を務める。2020年10月より現職。

長津 結一郎 准教授

芸術工学研究院

長津 結一郎准教授

専門はアート・マネジメント、文化政策学。障害のある人などの多様な背景を持つ人々の表現活動に着目した研究を行っている。東京藝術大学助手を経て、2016年4月より現職。

VASCONCELLOS VARGAS DANILO 准教授

システム情報科学研究院

VASCONCELLOS
VARGAS DANILO
准教授

専門は汎用人工知能(AGI)、認知アーキテクチャなど。ロバスト性と適応性を持つ次世代の人工知能(AI)の開発を目指し研究を行っている。九州大学助教を経て、2020年1月より現職。

加藤 百合 助教

薬学研究院

加藤 百合助教

専門は生化学、薬理学。現在は、COVID-19の重症化の予防・治療に資する創薬の研究に取り組んでいる。岡山大学特任助教を経て、2020年1月より現職。

藤井 秀道 准教授

経済学研究院

藤井 秀道准教授

専門は日本経済論、環境経済学。持続可能な社会に向けたイノベーションの創出や、環境保全と経済発展を両立させるために必要な政策・制度を研究。長崎大学准教授を経て、2018年4月より現職。

石橋 達朗 総長

九州大学

石橋 達朗総長

専門は眼科学。九州大学医学部卒業。米南カリフォルニア大学研究員、九州大学大学院医学研究院眼科学分野の教授などを経て、2014年から4年間、九州大学病院長を務める。2020年10月より現職。

 
加藤 百合 助教の取材風景

01

今ある九大の良さってなんだろう?

加藤 百合 助教の取材風景

01

今ある九大の良さってなんだろう?

 

総長指定国立大学法人※の指定を契機に、九大が目指す姿の実現のため「九州大学ビジョン2030」を策定しました。10年後、その中心となるのは今日集まっていただいた先生方をはじめとする若手研究者の皆さんです。九大が目指す姿というとテーマが大きすぎて皆さんイメージがしにくいと思うのですが、一人一人がどう変わっていくべきか、今日は忌憚のない意見を聞かせてください。まずは、他大学に在籍されていた経験がある皆さんから、九大の良さを教えてもらえますか?

加藤何より実験機器などの共用機器施設の充実ではないでしょうか。一つのラボでは買えないような高額な実験機器を使うことができ、やりたい実験をほぼこなすことができ助かっています。

藤井海外の優秀な学生がたくさんいて、知的交流があるところだと思います。

長津私は普段大橋キャンパスにいるので、以前は距離的にも心理的にもメインキャンパスである伊都キャンパスが遠いなあと感じていました。ですがここ数年で変わってきた気がします。

総長コロナ禍がきっかけではありますが、ICT環境が整い、以前よりオンラインで気軽につながることができるようになったのもありますね。距離や時間の問題が解消され、キャンパス間でも連携しやすくなりました。

藤井組織が大きいだけに大企業病的なところもあるので、チャレンジ精神とトップのリーダーシップが必要だと考えています。その点、本学は意思決定も早く、折に触れ石橋総長の考えを教職員に説明いただけるのはいいことだなあと思います。

02

社会を変えていくには
どうしていけば良いのだろう?

藤井 秀道 准教授の取材風景
藤井 秀道 准教授の取材風景

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社会を変えていくには
どうしていけば良いのだろう?

 

総長先生方はご自身の研究を通して、日々社会とどのように向き合い、取り組んでいらっしゃるのでしょう?

藤井私の専門は日本経済論と環境経済学です。自分の研究を社会にどう活かすか考えたとき、教員が個別に論文を書いて政策提言まで持っていくだけでは限界があると感じていました。昨年、新聞での私の研究の連載後に企業をはじめ様々な方面から問合せがありました。メディアなどで一般の人に研究をわかりやすく紹介していけば、共同研究のチャンスも広がり、社会実装を経て政策提言につながるのではないかと思いました。

また、九大に移ってきた時、将来活躍する人材を育てたいと考えていました。大学院教育により重点を置き、学生指導を通じて多くの研究成果を創出するとともに、次の世代を担う研究者の育成を目指しています。

加藤私は現在、COVID‐19に効く治療候補薬を探索し、臨床に持っていけるよう研究しています。ところが、基礎研究の成果を実用化へと進め、特許の取得まで行うには基礎研究の知識だけでは難しく、専門的なアドバイスが必要です。九大の医学系分野には、幅広い領域の専門家がアドバイスや業務支援を行う「ARO次世代医療センター※」があり、こうした専門を超えた組織の存在がとても重要だと思っています。

総長九大では、本学の知識や技術だけでなく、自治体や企業などが持つ技術やアイディアなどを組み合わせ、イノベーションを起こすオープンイノベーション機能を強化しています。特許の取得は、研究者一人でできるものではありません。大学としても支援しますのでぜひ相談してください。

ダニロ私は、人工知能の基礎研究が専門ですが、脳科学の実験から分かる事もあるのではないかと考え、幹神経細胞を使って脳の動きの観察を始め、心理学を応用した研究も進めています。また社会実装を意識して企業との共同研究にも力を入れています。

長津私は、芸術の分野を社会とどのようにつなぐかというアートマネジメントや文化政策をテーマに研究しています。現在は九州の劇場とタッグを組んで、どうすれば劇場空間で障害のある人が表現しやすくなるかリサーチするプロジェクトや、過疎や高齢化などの社会的課題がある地域で住民の人たちと一緒に作品を作りながら、芸術の果たす意味を考えるプロジェクトなどを行っています。社会のプロセスや出来事を、どのようにデザインし直していくかという研究ですので、今回大学が掲げたビジョンとは接点を感じています。

VASCONCELLOS VARGAS DANILO 准教授の取材風景

03

データを示していくだけでは
社会に届かない
新たな価値を生み出すDX研究・教育

VASCONCELLOS VARGAS DANILO 准教授の取材風景

03

データを示していくだけでは
社会に届かない
新たな価値を生み出すDX研究・教育

 

総長ビジョンの中ではDXも掲げていますが、皆さんはどう考えていらっしゃいますか?

ダニロデータは様々なところで多目的に利用できると思いますし、収集したデータを相互利用するといったこともあります。色々な側面から追究すれば、社会変革につながる新しい価値を創造できるのではないでしょうか。

藤井私は、DXには大きく二つの役割があると思っています。一つは、これまで見えなかったものを見える化すること。例えば、最先端技術を使って人々の幸福感(ウェルビーイング)を測る研究が進んでいます。センサーで定期的に情報が取れるので、社会的課題と紐づけながら、いかにして人々の幸福度を高めるか、科学的知見が容易に得られます。もう一つは、複雑化した社会の因果関係を解明して、限られた予算や人員をどこに重点的に配分するかを戦略的に考える上で役立つと思います。

長津私が担当する学部教育の授業では、社会的課題にアプローチするアプリ制作を課題にしています。そこでは、ただデータを示していくだけでは社会に届かないと伝えています。重要なのはデータをどう「使いこなす」か。これは芸術工学部が提唱してきた「技術の人間化」の考え方です。

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九大を変えていきたい!

石橋 達朗 総長の取材風景
石橋 達朗 総長の取材風景

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九大を変えていきたい!

 

総長ところで、大学への要望はありませんか?

加藤先ほど実験機器の話をしましたが、これらは担当の先生が複数の高額な機器を管理されていて負担が大きいようです。

総長そこは我々も課題と認識していて、機器や技術職員は全学でマネジメントした方が良いのではと話をしているところです。

長津私の場合は作品を作ったりプロジェクトを運営したり、社会実装していく研究でもあるので、自治体や文化庁、厚労省など学外の人たちと関わることが多いのですが、このような活動は評価が難しいと感じます。教員の評価基準も多様性が必要じゃないでしょうか。

総長確かに、評価基準を考える必要がありますね。

藤井私は時間をすごく買いたいです!(笑)私には2歳と5歳の子どもがいまして、育児と研究の両立に悩んだ時期もありました。今はうまく気持ちを切り替えていますが、時間の使い方でいうと、これからは教育と研究活動の両立がより求められると思います。

ダニロ私も、授業の担当が増え、指導する学生も増えてきているので、なかなか自分の研究時間の確保に苦労しています。授業、学生指導、研究のエフォートを可視化して、それぞれのバランスを取ることができるような仕組みがあるといいなと感じます。

総長研究費用についてはいかがですか?

藤井正直仕事がついてこないお金だと良いのですが(笑)、とはいえ共同研究等は研究に制約がつくものもあり、自分にとってどんなプラスがあるかを考えてターゲットを絞っています。科研費は自分のやりたい研究に使えますので、積極的にとっていこうと思っています。

加藤ありがたいことに私は若手研究者を対象にした「わかばチャレンジ」に採択されました。これまで大学内の若手研究者を対象にした金銭的な支援制度を聞いたことが無かったため、九大は充実しているなと思いました。

ダニロ問題なのは、補助金を獲得できたとしても予算の使い道に柔軟性がないことです。私の研究は、電気代だけで100万円かかります。その100万円を確保しなければ研究室の運用もできないのですが、経費の制約があって電気代が補助金では使えないのです。

長津理論系のものや作品作りにはなかなか外部資金がつきません。以前、大学マネジメントの話を聞く機会があったのですが、理工系や生命系の得られやすい研究分野で獲得した資金を人文系に回すべきだという話がありました。文系や芸術系が存在してこその総合大学なので、バランスをとることも大事だと思います。九大は人文社会科学系の研究支援を推進してくれていますので、どんどん拡充してほしいですね。

総長新たな教員の雇用を推進する制度でも、人文社会科学系の枠を作りました。社会実装によって得られた資金をまず大学に入れ、そこから人文社会科学系を含め必要なところに配分するといった循環を作っていくことも必要ですね。

長津 結一郎 准教授の取材風景

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多様な価値観を受け入れる
私たちが学生たちに
背中を見せていきたい

長津 結一郎 准教授の取材風景

05

多様な価値観を受け入れる
私たちが学生たちに
背中を見せていきたい

 

長津私は、ダイバーシティの視点も忘れてはいけないと思います。ジェンダーやLGBTs、障害や国籍の問題などに積極的に取り組むことが、結果的に創造的なものが生まれやすい環境にもつながると思います。多様性に関する考え方は学生の方が進んでいるところもあります。学生に根底の部分の安心感をもたらすためにも、ダイバーシティは欠かせない視点だと思うのです。

加藤そうですね。その観点で言えば、薬学では現在女性の教授がいません。私も含め30〜40代が多く、特にワークライフバランスを意識している世代です。ですから私たちが研究を続けている背中を見せなければいけないと思っています。そうすれば、進学しようと思う女子学生も増えると思うんですよね。

総長九大が成長するためには、若手の先生方の成長が不可欠です。そこにもダイバーシティが欠かせません。若手の先生方とその後に続く学生の皆さんの成長を期待していますし、私たちはそこをしっかりサポートしていきたいと考えています。2030年に向けて共に一歩を踏み出しましょう。本日はありがとうございました。

※本内容は「九大広報124号」に掲載されています。
(取材場所:九州大学伊都キャンパス フジイギャラリー)

指定国立大学法人

指定国立大学法人とは、世界最高水準の研究教育活動の展開が見込まれる国立大学法人を文部科学大臣が指定するもので、本学を含め10校が指定されている。

https://dnu.kyushu-u.ac.jp/

ARO次世代医療センター

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「革新的医療技術創出拠点プロジェクト」の拠点として様々な大学発の《シーズ》を探索・支援。研究者、関連団体、企業の方を対象に、試験立案から出口戦略まで研究支援を行っている。

https://www.aro.med.kyushu-u.ac.jp/

指定国立大学法人

指定国立大学法人とは、世界最高水準の研究教育活動の展開が見込まれる国立大学法人を文部科学大臣が指定するもので、本学を含め10校が指定されている。

https://dnu.kyushu-u.ac.jp/

ARO次世代医療センター

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「革新的医療技術創出拠点プロジェクト」の拠点として様々な大学発の《シーズ》を探索・支援。研究者、関連団体、企業の方を対象に、試験立案から出口戦略まで研究支援を行っている。

https://www.aro.med.kyushu-u.ac.jp/
 
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2022/05/17