脱炭素化へ向けた研究の取り組み
2020年10月、日本政府は「2050年までにカーボンニュートラル実現」という目標を掲げました。 しかし、わずか30年で温室効果ガスの排出を完全にゼロにできるのでしょうか?
再生可能エネルギーの分野で大きな成果を上げてきた九州大学は、これまでもこのような困難な課題に取り組んできました。しかし、より良い未来を確かなものにするためには、より大胆なアプローチが求められます。現在、持続可能な社会への転換をさらに加速させるために、大学が中心となり「カーボンニュートラル」にとどまらない「カーボンマイナス」に取り組んでいます。 環境にやさしい未来の実現には、市民、科学者、産業界の専門家、政策立案者、経済専門家など、あらゆる立場の人々の協力が必要不可欠です。九州大学は、福岡市、九州地方、そして世界と連携し、人類が生存可能な未来に貢献できる人材を育成しています。
より効率的に大気から炭素を回収する
仮に全ての二酸化炭素(CO2)の排出を直ちに止めたとしても、地球の気温上昇が落ち着くには数十年かかります。では、どのような解決策が考えられるでしょうか。ナノ工学などを専門とする藤川茂紀主幹教授(九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所)は、カーボンニュートラル化学という新しい領域の開拓を目指して様々な研究に取り組んでいます。藤川教授にとって、その答えは明快であり、大気中の二酸化炭素をDAC(Direct Air Capture)と呼ばれる方法で直接回収し、新たな炭素循環に再利用することです。炭素回収は、すでに発電所や大型の工場などで実施され、CO2排出抑制に繋がっています。しかし、現在のプロセスでは、排ガスの回収に大量の液体を使うため、大きなスペースと費用、電力が必要です。透過膜を使い、排ガスを分離させる方法がより効率的ではあるものの、膜を通過するガスが微量であることから、ほとんど検討されてきませんでした。
「高いガス透過性を持ち、 CO2を選択的にろ過できる超薄膜を10年にわたり開発してきました。フィルター自体の厚さは、ラップの300分の1程度です」と、藤川教授は説明します。「このフィルターにより、工場内といった環境だけでなく、大気中のCO2を直接回収し、利用可能な炭化水素への変換を実現することが目標です。CO2変換については先導物質化学研究所の山内美穂先生、イリノイ大学アーバナシャンペーン校のPaul Kenis先生が中心となって進めており、協働してこれらが一体となったシステムの開発を進めております」
発生したCO2を回収し、メタンに変換する機能が備わったエアコンを想像してください。変換されたメタンがエネルギー源として再利用され、エアコンを動かすのです。「大胆な提言であり、クリアしなければならない課題も多くありますが、私の研究が目指すのはそのような未来像です」と藤川教授は目を輝かせます。
九州大学
カーボンニュートラル・
エネルギー国際研究所
主幹教授 藤川茂紀
※本内容は「CONNECT Issue 3」(英語版)に掲載されています。
https://www.kyushu-u.ac.jp/en/university/publicity/publications/connect藤川教授の研究内容は、次にも掲載されていますのでご覧ください。
■九州大学藤川茂紀研究室Webサイト
https://i2cner.kyushu-u.ac.jp/~fujikawa/■九州大学Webサイト(研究成果)
「分離膜を用いた大気からのCO2回収」
■九大広報123号(クローズアップ九大)(P.11~P14)
「ビヨンド実現に向けたCO2循環システム」
脱炭素化へ向けた
研究の取り組み
2020年10月、日本政府は「2050年までにカーボンニュートラル実現」という目標を掲げました。 しかし、わずか30年で温室効果ガスの排出を完全にゼロにできるのでしょうか?
再生可能エネルギーの分野で大きな成果を上げてきた九州大学は、これまでもこのような困難な課題に取り組んできました。しかし、より良い未来を確かなものにするためには、より大胆なアプローチが求められます。現在、持続可能な社会への転換をさらに加速させるために、大学が中心となり「カーボンニュートラル」にとどまらない「カーボンマイナス」に取り組んでいます。 環境にやさしい未来の実現には、市民、科学者、産業界の専門家、政策立案者、経済専門家など、あらゆる立場の人々の協力が必要不可欠です。九州大学は、福岡市、九州地方、そして世界と連携し、人類が生存可能な未来に貢献できる人材を育成しています。
より効率的に大気から
炭素を回収する
仮に全ての二酸化炭素(CO2)の排出を直ちに止めたとしても、地球の気温上昇が落ち着くには数十年かかります。では、どのような解決策が考えられるでしょうか。ナノ工学などを専門とする藤川茂紀主幹教授(九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所)は、カーボンニュートラル化学という新しい領域の開拓を目指して様々な研究に取り組んでいます。藤川教授にとって、その答えは明快であり、大気中の二酸化炭素をDAC(Direct Air Capture)と呼ばれる方法で直接回収し、新たな炭素循環に再利用することです。炭素回収は、すでに発電所や大型の工場などで実施され、CO2排出抑制に繋がっています。しかし、現在のプロセスでは、排ガスの回収に大量の液体を使うため、大きなスペースと費用、電力が必要です。透過膜を使い、排ガスを分離させる方法がより効率的ではあるものの、膜を通過するガスが微量であることから、ほとんど検討されてきませんでした。
「高いガス透過性を持ち、 CO2を選択的にろ過できる超薄膜を10年にわたり開発してきました。フィルター自体の厚さは、ラップの300分の1程度です」と、藤川教授は説明します。「このフィルターにより、工場内といった環境だけでなく、大気中のCO2を直接回収し、利用可能な炭化水素への変換を実現することが目標です。CO2変換については先導物質化学研究所の山内美穂先生、イリノイ大学アーバナシャンペーン校のPaul Kenis先生が中心となって進めており、協働してこれらが一体となったシステムの開発を進めております」
発生したCO2を回収し、メタンに変換する機能が備わったエアコンを想像してください。変換されたメタンがエネルギー源として再利用され、エアコンを動かすのです。「大胆な提言であり、クリアしなければならない課題も多くありますが、私の研究が目指すのはそのような未来像です」と藤川教授は目を輝かせます。
九州大学
カーボンニュートラル・
エネルギー国際研究所
主幹教授 藤川茂紀
※本内容は「CONNECT Issue 3」(英語版)に掲載されています。
https://www.kyushu-u.ac.jp/en/university/publicity/publications/connect藤川教授の研究内容は、次にも掲載されていますのでご覧ください。
■九州大学藤川茂紀研究室Webサイト
https://i2cner.kyushu-u.ac.jp/~fujikawa/■九州大学Webサイト(研究成果)
「分離膜を用いた大気からのCO2回収」
■九大広報123号(クローズアップ九大)(P.11~P14)
「ビヨンド実現に向けたCO2循環システム」