2月になり、今年度で定年を迎える教員の最終講義が続いています。 平成20年2月9日(土)には、工学研究院の新海征治教授の最終講義「サイエンスにおける偶然と必然、進化と成熟」が、伊都キャンパスで行われました。
新海教授は、ナノテクノロジーの基盤となる基礎概念のひとつである「分子機械」の最初の例となった「光応答性分子」(光などの刺激により分子の構造を変化させることにより、他の分子や原子を捕捉する機能を付与すること)や、これを分子の集合体の形や機能をコントロールするシステムへと展開した業績などで世界的に知られており、ノーベル化学賞に最も近い研究者の一人とも言われています。
この日、新海教授は、400人を越える国内外からの研究者や教え子、学生、そして取材に訪れたマスコミ各社を前に、これまでの研究生活やその時々の仕事内容を中心に語りました。 講義の後、これからの抱負を記者に訊かれて、4月から特任教授として九州大学に在籍することになっている新海教授は、「日本は今下り坂の予感がある。これを跳ね返せるのは次世代の人たち。日本は、その次世代にチャンスを与えるシステムが必要。私はこれからも目の前のテーマに全力で取り組み、若い人を育てて行きたい」と答えました。
(学生や若手研究者へのアドバイス) ●自己表現の機会には積極的に参加せよ。講演の聴衆の中に、将来を握るキー・パーソンが必ずいるから、常に気を抜いてはいけない。 ●外国人は「What's your chemistry?」とよく聞く。あなた自身のオリジナルテーマを聞いているのです。 ●研究には総論と各論がある。根幹に関わる、分野を越えてインパクトを与えられる総論をぜひやってほしい。 ●サイエンスには、発見、進化、成熟のステップがある。新発見に挑戦することは、「high risk」だが「high return」でもある。ぜひここに挑戦してほしい。 ●研究には自己増殖能力がある。高い山に登るとその向こうにはもっと高い山があるのと似ている。 ●いろいろな意見は参考に止め、最後は自分で決断し自分で責任を取る。自分の目で見、自分の手で触ったものだけが真実という意識が独創を生む。 ●闘わない者は研究者ではない。
※退職教授の最終講義一覧(PDF)
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