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九大と米国ワイスが共同で中枢神経領域の創薬開発へ

2006.12.08
トピックス
記者会見に臨む高田仁技術移転グループリーダー 九州大学は11月28日、米国大手製薬会社ワイス(Wyeth)と日本記者クラブ会議室(東京)で合同記者発表を行い、中枢神経領域での医薬品開発に関する共同研究を発表しました。

 薬学研究院の井上 和秀教授(薬効解析学)は、がん性疼痛、糖尿病性神経炎などの神経因性疼痛をはじめとする難治性疼痛のメカニズム解明に取り組んでおり、細胞膜に存在するイオンチャンネルであるP2X4受容体が神経因性疼痛の制御における重要な因子であることを明らかにしました(Nature,2003)。全世界で1500万人以上の患者が難治性疼痛に苦しんでおり、患者のQOLは著しく損なわれ、心身ならびに経済的に強い負担を強いられている現状です。本疾患による社会的損失は米国の試算では約8兆円であり、我が国でもかなりの社会的損失が認められます。また、高齢化社会にあたり患者数は更に増大するものと考えられています。患者にとって心身ともに負担を強いる難治性疼痛の制御は、社会的にも急がれる研究課題です。

 中枢神経領域を医薬品開発の重点領域としているワイス社は、創薬開発を加速するため、P2X4受容体が関与する神経因性疼痛の発症メカニズムに関する最新の情報提供ならびに医薬品候補化合物の評価を期待しています。本共同研究は、2005年10月から3年間を予定で行われ、ワイス社は、九州大学に対し総額15万ドルの研究資金を提供します。
 井上教授らは、「神経因性疼痛で苦しむ患者のケア」を最優先課題とし、独自の医薬品探索を進める一方で、ワイス社を含め国内外の複数の製薬企業との連携を進めています。  

 近年、創薬プロセスでは開発期間の短縮が勝負とされ、本学では創薬プロセスの上流域における学と産による協業が開発期間およびコストの縮小につながり、ひいては新薬の上市数増加と社会貢献につながると考え、グローバルな視点から積極的にパートナーを探索してまいります。