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カリフォルニアオフィスからの便り

2005.03.25
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カリフォルニアオフィス
カリフォルニアオフィス
2005年3月
九大カルフォルニア事務所所長
松尾正人(昭和36年工・応化)


 九大のオフィスがある北カルフォルニアでは1,2月は雨が多く、気温も5-15℃と低い状態が続き、雪が降ることはないにしても冬の梅雨みたいな憂鬱な日が続きます。今年は風邪がはやり私も含めて大抵の人は咳と倦怠感に悩まされたようです。やっと3月後半になってカルフォルニアらしい太陽が射し、これでもう冬が終わりかと思われます。あとは11月まで一滴も雨が降らない素晴らしい気候が続きます。

 さて、約1年かかりましたが、同窓会を税控除の出来る組織にする件は先日米国国税局から正式に書面にて承認されました。これからは米国九大同窓会に寄付した金額は米国での税控除を受けることができます。税控除にした目的はシリコンバレーで成功した卒業生が大きな金額を九大に寄付したいという申し出があったためその受け皿を作るためのものです。これからはその寄付を頂きそれをベースにしての活動方針を決めたいと思います。ただし、一人のための税控除では承認されませんので、他の卒業生からの寄付も大切な要因となります。米国在住を問わず、日米の九大の活動にご賛同いただける方のご寄付をお願いしたいと思います。

 先日谷川教授がこられた機会に九大卒業生2人を訪ねて、九大、ひいては福岡市の活性化について意見交換をしました。すでに九大広報37号で紹介されたRobert Huangさん(昭和43年電子工学)とゴルフをしながら米国同窓会としてどんな形で九大を支援するかにつき議論しました。まだ結論は出ていませんが、学生さんを活性化するために毎年何人かをシリコンバレーに招待して色々な人に会ってもらうことも一つの案として浮上しています。また、昭和30年電気工学卒の三井信雄さんはイグナイトグループというベンチャーキャピタルの創業者で、日米に跨って250億円に達する資金を動かしておられます。九大の学生を活性化するためにはどうしたらよいかと質問したら、学生さんより先生方の活性化を図るほうが先ではないかと言うショッキングな意見を頂きました。また、ベンチャー会社の社長候補として大企業にいる優れた人材に声をかけても皆断ってくるといって嘆いておられました。大企業にいれば将来設計ができるが、ベンチャー企業に入ると大成功するかもしれないが失敗したときのマイナスが大きくて乗ることができないというわけです。このような元気のない日本を活性化するにはどうしたらよいのかねと逆に問いかけられました。

 「シリコンバレーでは起業支援活動が盛んで、日本人のグループでは谷川教授らも設立に参加したSVJENやJTPA、SVMF、JBCなどが積極的に活動しています。日本からの訪問グループへの支援や起業についてのセミナーの開催など多種多彩の活動が行われています。先日、鹿児島大学から12人の学生がシリコンバレーツアーで来訪し、その打ち上げパーティに私も招待されました。全ての学生になぜこのようなツアーに参加したのかを発表してもらいました。単なる海外体験、英語のレベル向上というのもありましたが、なぜシリコンバレーは元気が良いのか知りたい、最先端の研究者の姿を見たい、ベンチャー成功の鍵は何か、自分の目標を作りたい、など多様な目的を持って参加しています。成果については、想像以上に英語力が必要だった、ここでは難しい仕事に誇りを持って前向きでしかも楽しくやっている、皆大きな目標を持っている、日本人より日本のことを思っている、など強く印象を受けたようで、価値観が大きく変わったという学生も何人かいました。現地を訪れることの大切さが分かりました。

 セミナーについては、先日はSVJENによる東大玉井教授の知財セミナーが開催され、日米の知財問題の違いが明確に示されました。また、私も関わっているSVMFと言うグループ主催で、有名なシリコンバレーのベンチャーキャピタリスト平強氏の講演会を催しました。平氏は多くのベンチャー企業とともに苦楽をともにされ、ご自身も投資額の1000倍、50億円、と言う利益を手にされた経歴を持っています。彼の偉いところはその金を使って更にベンチャー支援をしておられることで、最近ご自身の貴重な経験を基にして、著書「エンジニアよ挑戦せよ」(日経BP)を刊行し、日本の長期繁栄のために一番必要とされている新企業の創出のためのエンジニアの挑戦を強く訴えておられます。

 また、先日はバイオ関連のグループJBCが「バイオベンチャーの創業ストーリー」と題するセミナーをインターネットで日米の会場を結んで同時に行いました。当地で起業されたバイオベンチャーの創業者二人から創業にまつわる話を聞きました。「日本発サイエンスの世界展開」という心躍る標語をビジョンとするSanBioの森社長は、日本でサイエンスを探し回った結果慶応大学の岡野教授の技術を見つけ、脳神経細胞の再生事業を狙って起業したとのこと。一方、自分で研究開発した技術を持って創業したAcucelaの窪田社長(眼科医)は目の裏の部分に注目した再生医療です。お二人とも若く元気があり、聴衆に素晴らしいインパクトを与えてくれました。九大でもいつかこのような日本発サイエンスをもって起業する人が現れて欲しいと思いました。シリコンバレーに負けないように九大の皆さん大きな目標を持って元気でがんばってください。

 このところ九大の先生方の訪問が増えました。知財本部から先述の谷川教授、高田助教授と坪内氏、工学部長村教授、などです。それに加えて同窓会の最初の仕事として、九大から当地のIBM研究所に来られた工学部藤田助教授の住居設定のお手伝いをしました。アパートと家具と車という米国生活に必要最低限の品物を用意しましたので、先生は早速研究生活を開始することが出来たようです。


以上
 

写真上:シリコンバレー訪問の鹿児島大学の学生達
写真下:JBC主催バイオベンチャー創業セミナー会場