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2024年 総長年頭挨拶

総長式辞・挨拶等

2024年 総長年頭挨拶

 明けましておめでとうございます。
 「Kyushu University VISION 2030」の構想は、着実に進行しており、様々な活動が動き始めています。これらの活動が円滑に進み、また新たな活動を速やかに立ち上げるために、今年度も本学の構成員やステークホルダーの皆さんと丁寧な対話や議論を重ね、前進したいと考えています。

 COVID-19パンデミックがようやく明け、以前のように普通の日常生活を送れるようになった昨年後半でしたが、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル軍によるガザ地区攻撃などの戦争や多くの紛争が、長期化の様相を呈したまま2024年を迎えてしまいました。これらの戦争では、子供達や市民が巻き込まれ悲惨な状況のあることに、心が痛みます。一日も早く解決の糸口を見つけることが望まれますが、これらの戦争は世界中に大きな影響を及ぼし、日本人の生活は光熱費の高騰や物価高に見舞われています。大学自体も光熱費が1.5倍以上になり、今後、研究や教育への影響は必至でそれを最小限に留めることに苦慮しており、一日も早い平和の訪れが待ち望まれます。
 一方、パンデミック明けで、人びとの交流が活発になり、多方面にわたって物事が動き出している実感もあります。昨年は国立台湾大学のCHEN Wen-Chang学長イリノイ大学アーバナ・シャンペン校のRobert J. Jones学長ベトナム社会主義共和国のVo Van Thuong国家主席などが本学を訪問され、対面での交流の再開は大変喜ばしいことだと思っています。

 九州大学は、「Kyushu University VISION 2030」に掲げた目標に向けて、総合知で社会変革を牽引する基盤構築を推進し、「脱炭素」「医療・健康」「環境・食料」の3つの領域での社会的課題の解決と、教育、研究、医療のDXに取り組んでいます。
 「脱炭素」では、水素社会地域モデルの構築に向けた技術開発プロジェクトとして、水素燃料電池バスの一般運行を昨年11月に開始しました。「医療・健康」では、感染症創薬研究センターを10月に立ち上げ、平時の感染症研究から有事の医療、研究体制への迅速な移行システムと、安心な純国産ワクチン・治療薬の安定供給体制の構築に取組はじめました。また、今年3月には、別府市にある九州大学別府病院が新しくなり、地域と連携して今まで以上に地域医療を支える活動を行って行きたいと考えています。「環境・食料」では、宗像市とのウニの磯焼け問題の解決を目指す「宗像ウニプロジェクト」や、嘉麻市の放置竹林問題の解決を目指す「昆虫食研究」が本格化するなど、地域社会の課題解決の取組が進んでいます。
 DXでは、研究データを保存・共有する研究データ管理用ストレージシステムの提供開始や、医療DXでは、臨床情報、遺伝情報、環境・生活習慣情報を学習する医療サービス「ラーニングヘルスシステム」での統合による全人的な精密医療の実現に向けた取組が進んでいます。
 これらの研究成果は、産学官連携支援組織「オープンイノベーションプラットフォーム」でいち早く社会実装につなげることを目指しており、この組織は4月以降に外部法人化し、体制強化を図る予定です。

 また、人材育成の面では、高大連携から博士人材育成までの一貫した支援を行う「未来人材育成機構」を昨年4月に立ち上げ、価値創造人材の育成に向けた取組を推進したほか、6月には「価値創造型半導体人材育成センター」を新設し、半導体の性能向上を目指す研究、さらにはその半導体を用いて、新しい価値を創造する「価値創造型半導体スペシャリスト」の育成に向けた取組を開始しました。

 さらに、地域社会との共創の基盤構築に取り組んだ1年でもあり、昨年3月には、九州・沖縄地区の全11国立大学が、研究力向上を中心とした連携協力の共通プラットフォーム「九州・沖縄オープンユニバーシティ(KOOU)」を作り、個々の大学では対応が難しかった抜本的な研究環境の改善などに向けた取組を進めています。また、沖縄科学技術大学院大学(OIST)と包括連携協定を締結し、両大学の強みや特色を活かした研究分野間の交流により、優れた研究成果が生まれ、それが社会的課題の解決に結びつくことを目指しています。

 本学は昨年「国際卓越研究大学」の認定を目指しましたが、残念ながら認定候補とはなりませんでした。しかし、認定を目指した様々な検討の中で、本学が抱える課題が明らかになり、これらを解決する改革への歩みを止めることなく、引き続き取り組んでいきたいと考えています。見えてきた課題に一つ一つチャレンジしながら、新たな九州大学を皆さんと共に作っていきたいと思っています。2024年もどうぞよろしくお願い致します。

2024年1月1日
九州大学総長 石橋 達朗