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About 九州大学について

2025年度 春季入学式(学部) 総長告辞

総長式辞・挨拶等

2025年度(令和7年度)春季学部入学式 総長告辞

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。九州大学教職員一同、心よりお祝い申し上げます。また、今日までの皆さんの道のりをずっと見守り、支え励ましてこられたご家族、友人、関係者の方々にも心よりお喜び申し上げます。
今年度の学部新入生は、留学生26名を含む2,594名です。

本日は、本学の宇宙関連スタートアップの先駆的な存在であるQPS研究所の創設者、八坂哲雄九州大学名誉教授を来賓にお迎えし、先生の宇宙工学の研究が、どのように実用化に至ったかなどの興味深いお話が聞けると思います。私もとても楽しみにしています。

皆さんはなぜ九州大学で学ぶことを選ばれたのでしょうか。
大学教育とは、自分自身で学びたいことを選択し、その学問を究め、深め、やり抜き、体系的な知識にするということだと考えます。そして、それを基に自分の考えを導き出し、発展させ、形にして社会活動に役立てるのです。
大学は長い歴史と伝統の中で築かれ培われた「知」の塊です。その集積された「知」から学び、それを次の世代に伝え、新しい「知」を生み出すことが、ここに集う私たちの使命です。そして、今日から皆さんはその一員なのです。本学の長い歴史と伝統の中で、幅広い研究分野で培われ蓄積された知識と研究が、皆さんの学問に対する好奇心、探求心を掻き立てることを信じています。
皆さんがなぜ九州大学で学ぶことを選択したのか、そのことを折に触れて思い出してください。そこに皆さんの「学び」の原点があります。自分が選択した学びに真摯に向き合い、それを深め、目指した学びを全うして下さい。私たち教職員も共に皆さんの学びを支え、その学びを学位で保証します。

九州大学は1911 年に設立され、その理念に「自律的に改革を続け、教育の質を国際的に保証するとともに、常に未来の課題に挑戦する活力に満ちた最高水準の研究教育拠点となる」を掲げています。また、『教育憲章』では、秀でた人間性、教養豊かな社会性、優れた国際性、創造性の高い専門性を有する人間の育成を目指すことを定め、『学術憲章』では、人類が長い歴史の中で探究され、結実した叡智を大切にし、これを次の世代に伝えること、その上ですべての学問の伝統を基盤に新しい展開、先進的な知的成果を生み出すことを使命と規定しています。

本学の初代総長、山川健次郎先生は、「己が専門の学問の蘊奥(うんのう)を極め、合わせて他の凡てのことに一応の知識を有して居らんで、即ち修養が広くなければ完全な士と云うべからず」と説いておられます。本学はこの言葉を大切にし、皆さんが一年次に学ぶ基幹教育では、文理を問わず、異なる専攻の学生たちが一緒に対話型の協働学習をしながら、論理的思考力を養い、知識そのものを新たな視点から創造的・批判的に「知識の再生産」を試みる取り組みをしています。基幹教育は皆さんがこれから進む学問の道の出発点であり、基礎となります。山川先生の言葉を胸に、専門教育に向けて、基幹教育から真摯に取り組んでください。

2021 年に九州大学は指定国立大学法人に指定され、本学はその構想を基に「Kyushu University VISION 2030」を策定し、2030 年に向けて「総合知で社会変革を牽引する大学」への道を進んでいます。ここでいう「総合知」とは、本学が持つ自然科学系と人文社会科学系、さらにはデザイン系の「知」も組み合わせ、現代社会の複雑に絡む事象を単一の研究分野だけではなく、複数の分野の「知」を活用し、多様な視点で課題の解決に導く新しい知識や斬新な考え方を意味します。
本学が生み出す様々な知識、知見から総合知を導きだし、活用して、社会的課題を解決していくことと、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進め、教育・研究はもとより、社会変革に貢献するように取り組んでいます。いくつかの組織が立ち上がり、ビジョンの遂行が始まっていますが、本学は昨年大学内にあった産学官連携組織「オープン・イノベーション・プラットフォーム OIP」を独立させ、「九大OIP 株式会社」を設立しました。九州大学の研究からベンチャー企業創出を後押しし、企業などとの共同研究につなげる役割を担うという新たな挑戦です。

社会変革に貢献するという取組は、九州大学の中でこれまでも育まれてきました。本日はQPS 研究所の創設者である八坂哲雄先生のお話を聞く機会にめぐまれましたが、30 年前の1995 年に九州大学で始まった50 センチ級の小型衛星の開発から先生の物語は始まっています。くしくも3 月16 日、日本人宇宙飛行士の大西卓哉さんが米国スペースX のクルードラゴンで国際宇宙ステーションISS に無事到着し、新たなミッションが始まったという明るいニュースがありました。今まで、日本人のISS 船長は3 人で、初代は本学出身の若田光一さんです。宇宙は未知の領域です。だからこそ、宇宙と向き合うことで、地球の課題を解決できるのではないか。人類の宇宙開発は、1961 年ソ連のユーリ・ガガーリンがボストーク1 号で世界初の有人宇宙飛行に成功し、1969 年米国のアポロ11号が月面着陸に成功し、ISS における様々な研究が始まり、いまや官民一体となって行われ、60 年以上が経っています。どの学問にも未知の領域があります。その未知との出会いから、新しい知を発見し、社会変革や社会的課題解決につなげる。それが九州大学を含めたすべての大学のミッションだと思います。

未知との出会いという観点からもう一つ。今日入学した皆さんには在学中にぜひ留学を経験してほしいと思っています。私自身も米国留学を経験しましたが、異文化に触れ、多様な考えの人々と交流することで、新しい考え方や視点を持つことが出来るのはもちろん、更に自分を強くすることができます。
九州大学には、卒業生や関係者などからの貴重な支援を基につくられた「九州大学基金」があり、その中には先ほど述べた山川健次郎先生の名前を冠した「山川賞」など、皆さんに対する修学支援制度があります。近年、国も様々な支援策を打ち出していますが、大学院進学、特に博士課程への進学が減少傾向にあります。しかしながら、現代社会が抱える困難な課題を解決するためには、高度な専門性と汎用的能力が要求されており、博士人材の活躍が重要となっています。4年後、または6年後、皆さんの学びの好奇心が、次の大学院進学につながることを期待します。

皆さんが学ぶ九州大学には4つのキャンパスがあります。ここ伊都キャンパスは「総合科学の中枢・実証実験拠点」で日々2万人が集い、最先端の研究や教育が行われています。美しい四季を充分に楽しめる豊かな自然に囲まれた、東西に約3 キロ、南北に約2.5 キロ、272 ヘクタールの広大な敷地には、最新の研究棟や椎木講堂などの様々な施設があります。中でも約350 万冊の蔵書を誇る中央図書館はその機能も構造も秀逸です。この中央図書館4 階には、本学の卒業生である中村哲先生の「アフガンに寄り添った35 年」の多くの記録が集められた「中村哲医師メモリアルアーカイブ」があります。中村先生は1973 年に医学部を卒業され、その後35 年間、アフガニスタン復興のために尽くされました。本学の誇りです。残念なことに先生は2019 年に現地で凶弾に倒れられましたが、その後も先生を支えたペシャワール会の活動が続き、現地のPMS(ピースジャパンメディカルサービス)とアフガンの人達だけで建設した水路が完成しています。先生の尊い働きが、このような形でつながれていることに改めて中村先生の確固たる生き方、揺るぎない想いを感じます。アーカイブを一度訪ねてみて下さい。その他、筑紫キャンパスは、物質・環境・エネルギー分野の「先端科学融合拠点」として、大橋キャンパスは、芸術工学部があり、アジアにおける「先端デザイン拠点」として、病院キャンパスは、世界最先端の医療設備を備え、アジアにおける「生命医療科学拠点」として、それぞれ特色ある研究教育を展開しています。また、箱崎キャンパス跡地、「HAKOZAKI Green Innovation Campus」をコンセプトに掲げ、九州大学の歴史を継承した上で、環境先進都市としての新たな街づくりを進めることとなっています。

多発する自然災害、ウクライナ侵攻、ガザの戦闘、その他多くの地域の紛争など、私たちを不安にするこれらの事象は、人間が引き起こしたものです。また、日に日に成長を続ける生成AI についても、その功罪を見極め、どのように向き合っていくのか、考えていかなければならないものですが、これも人間が生み出したものです。人間によって、世界はますます不確定な時代となっています。ただ、この世界を良い方向に変えられるのもまた人間です。この時代に大学生になった皆さんには、学問を深めることはいうまでもありませんが、九州大学にあるたくさんの「知」を礎に、大いに自由な議論を交わし、社会の有り様、世界の有り様に目を向け、地球社会の一員としての自分の立ち位置と役割を見定めていく時間にしてほしいと考えています。

最後に、皆さんの新しい大学生活が希望と夢に満ちたものであることを祈り、そして、その実現に向けての一歩を踏み出された皆さんに、心からエールを贈ります。
本日はおめでとうございます。

2025年4月3日
九州大学 総長
石橋 達朗