Research Results 研究成果
ポイント
概要
総合研究大学院大学の蔦谷匠助教と澤藤りかい特別研究員 (現 九州大学講師)、東京大学の海部陽介教授と太田博樹教授、台湾の國立自然科學博物館の張鈞翔センター長、コペンハーゲン大学のフリード・ウェルカー准教授とエンリコ・カッペリーニ准教授など、日本、台湾、デンマークの国際共同研究チームは、台湾最古の人類化石の古代タンパク質配列を調べ、これが旧人の「デニソワ人」男性に由来することを明らかにし、Science誌に報告しました。
台湾の澎湖 (ほうこ) 水道の海底から発見されていた原始的な人類 (澎湖人) の下顎骨化石 (澎湖1号: 19–1万年前) は、発表当時、その形態的独自性と原始性から「アジアで発見された第4の原人」とされました (注1) (図1)。その形態学的評価は変わりませんが、今回の分析で、人類進化史におけるその位置づけが変わりました。
アジア東部、特に南東部の現代人のゲノムにはデニソワ人由来の要素があり、当地で両者が交雑したと推測されていました。しかし、デニソワ人の化石はこれまでアジア北部でしかみつかっていませんでした。本研究は、デニソワ人がアジア南東部にも分布していたことを化石の物的証拠から直接的に示しました。
本研究は、同時代に地球上に生息したネアンデルタール人や私たちホモ・サピエンスと比べて、デニソワ人の顎と歯がだいぶ頑丈でごついことも明らかにしました。これらの成果によって、謎に包まれていたデニソワ人の姿や分布がより明確になりました。
図1. 澎湖1号の下顎骨を右側面から写した写真。(撮影:東京大学・海部氏)
注釈
1. 台湾沖海底から発見された新しい原人の化石について|国立科学博物館https://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/32711.pdf
論文情報
論文タイトル:A male Denisovan mandible from Pleistocene Taiwan
掲載誌:Science
掲載日:2025年4月11日(金)
DOI:10.1126/science.ads3888
お問合せ先