Research Results 研究成果
株式会社BlueMeme(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮脇 訓晴、以下 BlueMeme)は、九州大学 生体防御医学研究所 高深度オミクスサイエンスセンター バイオメディカル情報解析分野 長﨑研究室(教授:長﨑 正朗、以下 九州大学)との共同研究により、量子AIを活用したゲノム解析技術「QTFPred(Quantum-based Transcription Factor Predictor)」を開発しました。本研究成果が、2025年11月26日(水)、英国オックスフォード大学出版局が発行する国際学術誌「Briefings in Bioinformatics※1」に掲載されましたことをお知らせいたします。
概要
1. 少量データでも高精度に予測できる新しいAIモデルを開発
量子計算の仕組みを搭載した独自のAIモデル「QTFPred」を開発(図参照)。実験データが限られるような転写因子でも結合パターンを高い精度で予測できるように設計。
2. 従来のAIを上回る精度を実証
ヒト細胞の公開データを用いた検証において、ほぼすべてのタスクでQTFPredは既存のAIモデルよりも高い予測精度を実現。訓練データが少量の条件でも安定した予測性能が可能となり、研究現場での活用に十分耐えうる性能を示した。
3. 転写因子の協調的結合のパターンを発見
解析の結果、複数の転写因子が協調して結合する仕組みが明らかとなった。生命現象の理解を一層深めるとともに、創薬研究にも新しい可能性をもたらす成果となった。
長﨑正朗教授 コメント
転写因子がDNAに結合する位置を正確に予測することは、遺伝子の働きや病気の仕組みを理解するうえで重要です。しかし、組織特異的な細胞で協調して機能する転写因子では十分な実験データが得られず、精度の高い解析が難しいという課題がありました。本研究では、量子計算の特性を活かし、この課題を克服する新しいアプローチを示すことができました。量子機械学習はまだ発展途上ですが、実用化に向けた大きな一歩になったと考えています。
論文情報
掲載誌:Briefings in Bioinformatics(Oxford University Press)
論文タイトル:QTFPred: Robust High-Performance Quantum Machine Learning Modeling that Predicts Main and Cooperative TF Bindings with Base Resolution
掲載日:2025年11月26日
筆頭著者:松原 太一
責任著者:長﨑 正朗
共著者:町田宗聡(BlueMeme)、松岡真功(BlueMeme) 他
DOI:10.1093/bib/bbaf604
※1 Briefings in Bioinformatics:https://academic.oup.com/bib
Oxford University Pressが発刊する生命科学分野の査読付き国際学術誌です。ゲノミクス、プロテオミクス、トランスクリプトミクス、構造生物学、システム生物学など幅広い分野を対象とし、特にバイオインフォマティクス(生命情報科学)における最新の手法や応用研究を扱っています。
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