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Research Results 研究成果
ポイント
RNF213 p.R4810K変異(※1)はもやもや病の発症しやすさに関わる遺伝子変異であることが知られていますが、日本人の約1–2%が保有する比較的頻度の高い遺伝子のタイプであり、大多数は無症候のままです。
概要
ICASは脳梗塞の主要な原因の一つであり、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病に加え、遺伝的要因の関与も注目されています。RNF213 p.R4810K変異はもやもや病の発症しやすさに関わる主要な遺伝子として知られる一方、近年、もやもや病に類似したICASとの関連も報告され注目されています。しかし、本変異保有者のうち、どのような背景因子が血管狭窄の発症・進展を引き起こすのかは明らかではありませんでした。
九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学分野の吾郷 哲朗教授、医療経営・管理学分野の松尾 龍教授、九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科の中村 晋之講師、清原 卓也助教らの研究グループは、九州大学病院および福岡県内7施設から構成される「福岡脳卒中データベース研究(Fukuoka Stroke Registry: FSR)」において、急性期脳梗塞または一過性脳虚血発作患者14,471例を対象に、RNF213 p.R4810K変異とICASとの関連がどのような因子によって規定されるかを解析しました。その結果、RNF213変異保有者では体格指数(BMI)が高いほどICASを認める人の割合が増加し、特に肥満(BMI 30以上)を伴う場合には、ICASを有するオッズ比が約6.5倍と著明に高いことが明らかとなりました。一方、変異非保有者ではBMI上昇による同様のリスク増加は明確ではありませんでした。本研究は横断解析であり地域集団に基づくため、一般化には慎重な解釈が必要ですが、RNF213 p.R4810K変異保有者において肥満がICAS合併リスクを増強する「修飾因子(第二の要因)」となり得ることを示しました。これらの知見は、遺伝的素因と生活習慣因子を統合したリスク層別化や、修飾可能な要因に着目した予防戦略の構築に寄与することが期待されます。今後、長期追跡研究や、インスリン抵抗性・慢性炎症などの代謝関連機序の解明が進めば、RNF213 変異保有者における発症予防と個別化医療の確立につながる可能性があります。
本研究成果は国際学術誌『Journal of Stroke』に2026年1月2日付でオンライン先行公開されました。
本研究グループからひとこと
とくに40~50歳前後の若年者で生活習慣病の危険因子が乏しいにもかかわらず脳主幹動脈狭窄を認める場合には、RNF213関連血管症の可能性があり、適切な診断とリスク管理が重要です。九州大学病院ではこのような患者さんに対する専門的評価および遺伝学的背景を踏まえた治療方針の検討を目的として、腎・高血圧・脳血管内科外来でのご紹介・ご相談を受け付けています。
図. RNF213変異とBMIの組み合わせでみたICASの有無
用語解説
(※1) RNF213 p.R4810K変異
RNF213遺伝子に生じるアミノ酸置換(p.R4810K)で、東アジア人に比較的多くみられます。もやもや病の発症しやすさに関わる変異として知られています。
(※2) 頭蓋内動脈狭窄(intracranial arterial stenosis: ICAS)
脳の中を走る太い動脈が狭くなる状態です。狭窄や閉塞により脳梗塞を起こします。
(※3) オッズ比
ある要因の有無によって、事象の「起こりやすさ(オッズ)」がどれくらい違うかを示す統計指標です。本稿ではRNF213 p.R4810K変異の有無によって、どの程度ICASが合併するか、その起こりやすさを示しています。
(※4) RNF213関連血管狭窄
RNF213 p.R4810K変異を背景に生じる狭窄・閉塞性の血管病変です。脳血管に多い一方、近年、頸動脈など脳以外の血管にもみられる可能性が報告されはじめています。
論文情報
掲載誌:Journal of Stroke
タイトル:RNF213 p.R4810K Variant and Intracranial Atherosclerosis: Increased Risk in Obese Variant Carriers
著者名:高島正光、清原卓也、中村晋之、尾崎雄一、吉野文隆、橋本剛、日高壮意、佐原範之、入江芙美、脇坂義信、松尾龍、鴨打正浩、北園孝成、吾郷哲朗
DOI:10.5853/jos.2025.02607
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