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Research Results 研究成果
ポイント
概要
私たちの太陽のような星は、「フィラメント」と呼ばれる分子雲内の細長い高密度構造の中に存在する「前恒星コア」(ガスと塵の高密度な塊)の崩壊によって形成されます。このフィラメントには強い磁場が存在していますが、星形成過程における磁場の役割は依然として明確にされていません。イオンは磁場からの力を感じるため磁力線と結合(カップリング)していますが、部分的に電離したプラズマ中に存在する中性粒子は磁場から力を感じません。前恒星コアのような高密度環境では電離度が低いため、磁場と中性粒子は分離(デカップリング)して運動します。そのため、重力よってコアの中心に向かって落下していく中性粒子はイオンと異なる振る舞いを示し、異なる速度構造を持つと予測されます。しかし、この予想される速度差(ドリフト速度)はこれまで観測的には十分に明確に検出されていません。
本研究では九州大学高等研究院稲盛フロンティアプログラムのアルズマニアン ドリス准教授の研究グループと国立天文台、マックス・プランク地球外物理学研究所、鹿児島大学、九州産業大学、ミリ波電波天文学研究所、ヨーロッパ南天天文台と共同研究を行いました。スペイン南部にある口径30mの単一鏡型電波望遠鏡を用いて、地球から最も近い星形成領域の一つであるおうし座分子雲に位置する典型的な前恒星コアL1544に向けて2種類の分子、重水素化ジアゼンニリウムイオン(N₂D⁺)と中性分子重水素化アンモニア(NH₂D)の放射を観測しました。
この2分子は前恒星コア内部の高密度領域をトレースする理想的な指標分子であり、N₂D⁺とNH₂Dの速度マップを比較した結果、コア内において平均で 0.05 km/s の速度差が見つかりました。私たちはこの速度差を両極性拡散の証拠として解釈しました。両極性拡散は前恒星コアの磁気を弱めることができ、星形成に必要な重力崩壊を引き起こす、もしくは早めることができます。本成果で両極性拡散を確認できたことにより、初期星形成を引き起こすために必要なメカニズムを解明しました。
本結果は、初めて重力崩壊直前の前恒星コア内部のN₂D⁺とNH₂Dのドリフトの速度検出に成功しました。この成果は、コア内部でのイオン・中性粒子のデカップリングを調べるだけでなく、前恒星コア段階におけるダスト粒子の成長が、コアの力学的進化および原始星への崩壊過程を調整する重要な役割を果たすことを示しました。
本研究成果は、2026年7月10日に学術誌「Astronomy & Astrophysics」に掲載されました。
フィラメント状分子雲に埋め込まれたL1544前恒星コア
論文情報
掲載誌:Astronomy & Astrophysics
タイトル:Probing the ion-neutral drift velocity towards the L1544 prestellar core. Detection of ambipolar diffusion using N2D+and para-NH2D.
著者名:Doris Arzoumanian, Silvia Spezzano, Tommaso Grassi, Paola Caselli, Yusuke Tsukamoto, Haruka Fukihara, Yoshiaki Misugi, Felipe Alves, Jaime Pineda, Sigurd Jensen, Elena Redaelli, and Alexei Ivlev
DOI:10.1051/0004-6361/202658871