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Research Results 研究成果
ポイント
概要
地球全体で土壌の有機炭素注3の微生物分解により放出される二酸化炭素(CO2)の量は人為的CO2排出量の約5倍に相当しているため、気候変動が土壌のCO2放出動態に及ぼす影響を明らかにすることが重要です。
新潟大学農学部の永野博彦助教と同大学大学院自然科学研究科博士後期課程の鈴木優里さん(大学院生)の他、九州大学大学院農学研究院の平舘俊太郎教授、岡山大学、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所、東北大学、アジア大気汚染研究センター、北海道大学などの研究者で構成される研究グループは、北海道の森林で採取した表層土壌と埋没腐植層(過去の火山灰堆積により下層へ埋没した過去の表層土壌)を対象に室内培養実験を行いました。その結果、気候変動下での豪雨や干ばつといった極端気象の頻発化で危惧されるこれまでに経験のない土壌の極度の乾燥と湿潤の繰り返し(乾湿繰り返し)により、CO2放出量が大きく増大することが示されました。特に埋没腐植層では、CO2放出増大量が微生物バイオマス量よりも遥かに大きく、土壌炭素の安定化に寄与すると従来考えられてきた活性金属―有機物錯体成分の分解が促進される可能性が示されました。本成果は、本研究グループによる2025年の先行研究注4を支持するものであり、大きな不確実性が残されたままになっている気候変動下の炭素循環予測、さらには地球環境変化の将来予測の精緻化に貢献することが期待されます。
図1. 本研究で提示された乾湿繰り返しによる土壌のCO2放出増大メカニズム
用語解説
(注1)微生物バイオマス
土壌中に微生物として存在している有機物の量であり、土壌の全有機炭素量の1%程度である一方、植物が利用可能な栄養成分の供給源でもあり、農業生産環境のうち特に土壌肥沃度の重要指標の一つとして古くから研究されてきました。
(注2)活性金属―有機物錯体成分
土壌に存在する活性金属―有機物錯体成分は、反応活性の高いアルミニウムや鉄と結合した土壌有機物を主体とする土壌成分であり、ピロリン酸ナトリウム溶液によって抽出可能な成分として定義されています。日本に広く分布する火山灰性土壌(黒ボク土)中において、有機炭素が高濃度で長期間安定的に蓄積されている主要因の一つと考えられています。
(注3)有機炭素
全球において土壌中に存在する有機炭素の量は植物体存在量の3~4倍、大気存在量の2~3倍に達しており、陸域で最大の炭素プールとなっています。
(注4)2025年の先行研究
Suzuki, Y., Hiradate, S., Koarashi, J., Atarashi-Andoh, M., Yomogida, T., Kanda, Y., & Nagano, H. (2025). Comprehensive increase in CO2 release by drying–rewetting cycles among Japanese forests and pastureland soils and exploring predictors of increasing magnitude. SOIL, 11(1), 35–49. https://doi.org/10.5194/soil-11-35-2025
国内で採取した10土壌を対象に土壌培養実験を実施し、乾湿繰り返しに伴うCO2放出増大がいずれの土壌においても発生することを示しました。また、土壌中の活性金属と有機物で形成された錯体成分の存在量が多い土壌ほど、乾湿繰り返しによるCO2放出の増大率が大きいことも見出しました。
(2025年1月21日, 新潟大学プレスリリース「乾燥と湿潤の繰り返しが土壌のCO2放出を増大させることを解明」 https://www.niigata-u.ac.jp/news/2025/771922/)
論文情報
本研究成果は、2026年9月4日(国際標準時)、日本地球惑星科学連合(JpGU)の科学誌「Progress in Earth and Planetary Science (PEPS)」に掲載されました。
【論文タイトル】An evaluation on contribution of organo–metal complexes to enhanced soil CO₂ release during drying–rewetting cycles using buried humic horizon soils
【著者】Yuri Suzuki, Syuntaro Hiradate, Jun Koarashi, Mariko Atarashi-Andoh, Kazuki Suzuki, Masataka Nakayama, Yukiko Abe, Kouki Hikosaka, Hirofumi Kajino, Hiroyuki Sase, Rieko Urakawa, Hirohiko Nagano
【doi】10.1186/s40645-026-00843-6
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