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Research Results 研究成果

世界の「現場」をつなぐ農学の国際共修モデル「COIL+」

国境を越えた学びが、持続可能性への意識・行動と協働力に与える変化を検証
農学研究院
房賢貞 助教
2026.10.15
研究成果Humanities & Social SciencesEnvironment & Sustainability

ポイント

  • 食料、環境、気候変動など、地域ごとに異なる農学の課題を国境を越えて学ぶ国際共修モデル「COIL+(※1)(※2)」を海外協定大学と展開しました。
  • 学生の学びを追跡した結果、持続可能性への意識・行動の変化に加え、チームワークやコミュニケーションなどの成長が示されました。また、その学びを支える3つの仕組みを明らかにしました。
  • 今後は、異なる国・地域の学生との出会いを意味のある学びへつなげる教育条件を明らかにし、農学の国際共修(※3)に活用できる教育設計原理の構築を目指します。

概要

  農学は、食料、土壌、水、気候、生物多様性など、人間の生活と環境との関係を幅広く扱います。これらの課題は地域ごとに異なる形で現れる一方、気候変動や食料安全保障など、国境を越えて相互に関係しています。そのため、異なる地域の知識や経験を比較しながら課題を捉える学びが重要です。
 九州大学大学院農学研究院の房賢貞助教らの研究グループは、海外協定大学との連携により、オンラインでの国際協働学習と各地域でのフィールド学習を組み合わせた国際共修モデル「COIL+」を展開してきました。今回、COIL+に参加した学生の学びを異なる観点から検証した二つの研究成果を発表しました。
 一つ目の研究では、日本と韓国の学生19名を対象に調査しました。持続可能性に対する態度の平均値は、参加前の3.2から参加後の4.1へ上昇し、大きな効果量(Cohen's d = 1.14)が確認されました。また、9か月後にも参加者の70%が持続可能性に関わる行動を継続していました。
 二つ目の研究では、2022~2024年度の3回のCOIL+を対象に、ソフトスキルとグローバルコンピテンス(※4)の形成過程を分析しました。学生が特に大きな成長を認識していたのは、チームワークとコミュニケーションでした。また、その学びを支える3つの主要な仕組みが明らかになり、9か月後にはプログラム外での「学びの転移(※5)」も確認されました。
 本取組では、教育実践から生まれた問いを研究によって検証し、その知見を次の教育設計へ還元してきました。今後は、国や地域の境界を越えた出会いが、どのような条件のもとで意味のある学びへ発展するのかを検討し、農学における国際共修の教育設計原理へと発展させることを目指します。
 本研究成果は、国際学術誌『International Journal of Sustainability in Higher Education』に2026年4月22日(水)、8月14日(金)に2報の論文として掲載されました。

農学の専門知と地域の「現場」をつなぐCOIL+の学習環境

COIL+は、オンラインでの国際協働学習と各地域でのフィールド学習を組み合わせ、九州大学と海外協定大学が持つ農学の専門知と地域の「現場」を共有の学習資源として結びつける国際共修モデルである。学生は異なる地域・文化・専門的背景を持つ学生と協働しながら学ぶ。さらに、その教育実践を研究によって検証し、得られた知見を次の教育設計へ還元する。

研究者からひとこと

農学が扱う課題は、それぞれの地域の自然環境や社会の中で異なる形で現れます。しかし、その多くは国境を越えてつながっています。異なる地域の学生が互いの「現場」を持ち寄ることで、自分たちが当たり前だと思っていた課題を別の視点から捉え直すことができます。COIL+を、そうした問いと学びが生まれる教育環境として発展させていきたいと考えています。(房賢貞)

用語解説

(※1)COIL(Collaborative Online International Learning)
異なる国・地域の大学の学生が、オンラインを活用して協働しながら学ぶ教育方法です。

(※2)COIL+
COILによるオンラインでの国際協働学習と、各地域でのフィールド学習を組み合わせた国際共修モデルです。本取組では、各大学の農学の専門知と地域の「現場」を共有の学習資源として結びつけています。

(※3)国際共修
異なる言語・文化・教育的背景を持つ学生が共に学び、その違い自体を学習資源として活用する教育の考え方です。

(※4)グローバルコンピテンス
異なる文化や社会的背景を理解し、多様な人々と関わりながら課題について考え、協働するための能力を指します。

(※5)学びの転移
ある学習環境で身につけた知識やスキルを、別の学習や活動、実生活などの異なる場面で活用することです。

論文情報

(論文1)
掲載誌: International Journal of Sustainability in Higher Education
タイトル:COIL+: Enhancing Sustainability Competencies in Higher Education through Experiential and Problem-Based Learning
著者名: HyunJung Bang
DOI: 10.1108/IJSHE-03-2025-0178

(論文2)
掲載誌: International Journal of Sustainability in Higher Education
タイトル: COIL+: Integrating Experiential and Blended Learning to Advance Soft Skills and Global Competence in Sustainability Education
著者名: Abrianna Elke Chairil, HyunJung Bang, David M. Rosch
DOI: 10.1108/IJSHE-10-2025-1256