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Research Results 研究成果

平均点に隠れていた企業の気候情報開示の進展

10年・8,959社のCDPデータから、同じ企業の改善と評価対象の拡大を分けて可視化
工学研究院
キーリー アレクサンダー 竜太 准教授
2026.10.30
研究成果Humanities & Social SciencesMath & DataEnvironment & Sustainability

ポイント

  • 2016年と2025年の両年に評価された1,470社の平均CDP気候変動スコア(※1)は1.12ポイント上昇。全体平均の上昇幅0.42ポイントを大きく上回りました。
  • 評価対象企業の入れ替わりによる構成変化(※2)は、全体平均の変化を0.70ポイント押し下げていました。2016年には評価がなく、2025年に評価された企業群の寄与が中心でした。
  • 同じ企業や参加時期の近い企業を比較することで、開示評価の進展をより適切に把握できることを示し、投資家や企業の判断に役立つ比較方法を提示しました。

概要

 企業の気候情報開示が広がる中、その進展を平均点だけで捉えてよいのでしょうか。九州大学大学院工学研究院のキーリー アレクサンダー 竜太准教授、同大学都市研究センターの謝俊助教、大学院経済学研究院の藤井秀道教授、大学院工学研究院の馬奈木俊介主幹教授らの研究グループは、2016~2025年のCDP気候変動評価データに基づき、文字評価を持つ8,959社・延べ37,450社年を対象に分析しました。同じ企業の評価の向上と、評価対象企業の構成変化を分けた結果、全体平均の緩やかな上昇の背後に、同じ企業のより大きな改善があることが分かりました。評価対象が広がる時代に、情報開示の進展を読み取るための実用的な視点を示す成果です。
 本研究は2026年10月14日(水)(現地時間)にCorporate Social Responsibility and Environmental Managementにオンライン掲載されました。

図1 全体平均の背後にある二つの動き。2016年と2025年の両年に評価された1,470社の平均スコアは1.12ポイント上昇した一方、評価対象企業の構成変化が−0.70ポイントとなり、全体平均の上昇幅は0.42ポイントでした。構成変化の内訳は、2016年に評価がなく2025年に評価された企業群が−0.90ポイント、その逆の企業群が+0.20ポイントです。スコアはD−=1 ~ A=8。F・評価なしは除外。論文の集計値に基づく本リリース用の新規図版です。

研究者からひとこと

平均という一つの数字の背後には、同じ企業の開示の変化と、評価対象となる企業の入れ替わりが重なっています。本研究では、その二つを分けて捉えることで、気候情報開示の進展をより正確に測る必要性を示しました。企業や投資家が開示の改善を判断する際の手がかりとなるよう、今後は実際の排出量の変化とも照らし合わせ、企業の気候対応をさらに丁寧に検証していきたいと考えています。
(キーリー アレクサンダー 竜太)

用語解説

(※1) CDP気候変動スコア:
企業の回答に基づき、気候変動に関する情報開示などを評価する指標。本研究ではD−からAの8段階を1~8点に換算しました。

(※2) 構成変化:
評価対象に加わる企業と外れる企業の違いにより、集団の平均値が変わること。本研究では両端年の評価の有無で企業群を定義しています。

論文情報

掲載誌:Corporate Social Responsibility and Environmental Management
論文名:The Hidden Arithmetic of Climate Disclosure: How a Decade of CDP Climate Scores Masks a Large Within-Firm Rise and an Equally Large Composition Drag
著者:Alexander Ryota Keeley, Jun Xie, Hidemichi Fujii, Shunsuke Managi
公開日:2026年10月14日 オンライン速報版(e71080)
DOI: 10.1002/csr.71080