Research Results 研究成果
九州大学大学院薬学研究院の大嶋孝志教授、森本浩之助教らの研究グループは、ペプチド医薬品の原料として期待されているα位二置換非天然アミノ酸誘導体の不斉合成に有効な末端アルキンの触媒的付加反応の反応機構解析および適応範囲の拡大に成功しました。
ペプチド医薬品は、ヒトの体内で分泌される生理活性物質を根源とするため、副作用の少ない理想的な医薬品と考えられており、各種癌への治療・応用が検討されています。しかし、構造が複雑で化学合成が難しいことや開発コストが高い等の要因があります。研究グループは以前の研究で、環境調和性に優れたα位二置換非天然アミノ酸合成に有効である、ロジウム触媒による末端アルキンの直接的付加反応を見出していました。今回、本反応の詳細な反応機構解析の結果、より高活性な新規触媒を見出し、反応性の向上・触媒量の低減化・適応範囲の拡大に成功しました。これにより、種々のα位二置換非天然アミノ酸誘導体の効率的合成が可能となり、今後、同様の触媒反応の開発に新たな指針を与えるとともに、ペプチド医薬品の研究開発推進に期待されます。
この研究成果は、国際科学誌「Journal of the American Chemical Society」に2016年4月20日(水)付けオンライン版(DOI: 10.1021/jacs.6b01590)で発表されました。
(参考図)
私たちは「低環境負荷の有用分子合成法の開発」を目指して研究を行っています。以前の研究を行う中で見つけた現象に疑問を持ち、その原因を突き詰めることで触媒活性向上に重要な知見が得られ、新たな触媒の開発につなげることができました。