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研究成果

公開日:2018.08.21

なぜ気孔には葉緑体があるのか? 植物科学の長年の謎に迫る

研究成果 理学

 植物は陸上に進出する際に、水分蒸発を防ぐためにクチクラ層を生み出しましたが、同時にCO2の体内への取り込みや蒸散を行うために体表面に「気孔」を発達させました。気孔の細胞(孔辺細胞)は葉緑体をもつことが知られていますが、その成り立ちや機能については詳しいことは分かっていませんでした。
 今回、九州大学大学院理学研究院の祢冝 淳太郎 准教授と射場 厚 教授、及びカリフォルニア大学サンディエゴ校のJulian Schroeder教授、埼玉大学の西田 生郎 教授らの研究グループは、モデル植物シロイヌナズナを使った遺伝学的解析から、孔辺細胞の葉緑体が、他の光合成細胞とは異なり、葉緑体の祖先とされる光合成細菌(シアノバクテリア)から引き継いだ脂質代謝経路(原核経路)を退化させ、宿主である真核細胞の脂質代謝経路(真核経路)が中心となって葉緑体の形成や機能を維持していることを突き止めました。また、この孔辺細胞の葉緑体が形成されなくなると、CO2による気孔開閉応答が抑えられることも明らかにしました。これらの研究結果は、孔辺細胞の葉緑体が独自の脂質代謝バランスを発達させており、植物のCO2感知機構に重要な働きをしていることを初めて明らかにしたものです。本研究で得られた知見は、植物科学の長年の謎であった気孔の葉緑体の存在意義を解き明かすだけではなく、近年急激に上昇している大気CO2濃度が農作物に及ぼす影響を理解するうえでも、有用な情報となることを期待しています。
 本研究成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences USA」のオンライン版に掲載されました。

参考図:葉緑体の膜形成に欠かせない葉緑体脂質は、葉緑体内で作られる原核型経路(赤矢印)と、一旦葉緑体の外に出て、また葉緑体に戻ってくる真核型経路(青矢印)の2つの経路から合成されます。本研究により、孔辺細胞は他の光合成細胞と比較して、葉緑体の祖先であるシアノバクテリアから引き継いだ原核型経路が退化していることが分かりました。

研究者からひとこと

気孔には、なぜ葉緑体があるのだろうか?研究をはじめた学部生の時から抱いていた疑問でした。今回、その答えの一つにたどり着き、気孔葉緑体の新しい側面を見出すことができました。これまで研究をサポートして下さった射場教授をはじめ、研究仲間、家族に感謝しています。

論文情報

Eukaryotic lipid metabolic pathway is essential for functional chloroplasts and CO2 and light responses in Arabidopsis guard cells ,Proceedings of the National Academy of Sciences USA,
10.1073/pnas.1810458115

研究に関するお問い合わせ先

祢冝 淳太郎 理学研究院 准教授

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