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脂肪酸が第6番目の基本味である証拠となる神経を新発見 -今後の摂食行動・消化吸収との関連解明や食品開発へ影響大-

2019.02.05
研究成果Life & Health

食べ物に含まれる油脂の存在を強く意識はできませんが、あればより好んで食べたくなります。私達はどうやって油脂の存在を知るのでしょうか?九州大学五感応用デバイス研究開発センターの安松(中野)啓子特任准教授、二ノ宮裕三特任教授らの研究グループによって、他の味とは独立して脂肪酸の味を伝える神経が鼓索神経の一部に発見されました。これは甘味、苦味、うま味、塩味、酸味の5つの基本味に加え、脂肪の味が6番目の基本味である新たな証拠となります。
受容体GPR40、GPR120やトランスポーターCD36がげっ歯類の味蕾細胞に存在し、脂肪酸を受容している可能性が示唆されていましたが、ヒトの官能評価、げっ歯類の嗜好性、そして細胞の応答性に関する今までの研究では、脂肪酸独自の味の存在を証明することはできませんでした。今回マウス鼓索神経単一線維における応答を記録したところ、脂肪酸に特異的な応答を示す神経線維が全体の約17.9%を占めていました。また、半数以上の甘味、うま味応答神経群が脂肪酸に応答しました。GPR120を発現しないGPR120-KOマウスでは脂肪酸神経は激減し、味覚嫌悪学習を用いた行動実験では、このマウスはリノール酸とうま味物質のグルタミン酸を区別できませんでした。このことから、脂肪酸独自の味を感知する味細胞では、GPR120が重要な役割を果たすことがわかりました。
今回の報告は、必須脂肪酸を含む長鎖脂肪酸の検知システムが生体に備わっており、体内で脂肪酸が様々な効果を及ぼし健康を保つために、体内に選択的に取り込む手掛かりになっている可能性を示しています。今後、摂食行動・消化吸収との関連解明や、食品開発へ大きな影響を与えると期待されます。
この研究は欧州生理学連合(Federation of European Physiological Societies)の公式学術ジャーナルであるActa physiologicaにEditorialの確定版が2019年1月16日(水)にオンライン公開されました。

(参考図)食物中の油脂は唾液等のリパーゼにより脂肪酸に分解され、受容体・トランスポーターを介して味細胞とそれにつながる神経によって脳に伝えられる。今回発見された脂肪酸に最も高い応答を示す神経はGPR120受容体発現細胞につながっており、オレイン酸よりもリノール酸(必須脂肪酸の1つ)に対し大きな応答を示す。GPR120を発現しないマウスはうま味とリノール酸の区別ができず、正常型マウスより高い濃度のリノール酸しか検出できない。

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