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世界最高級強度のレーザー光が引き起こす電子の特異な振る舞いを解明!
―量子メスの実現に向けた重要な知見―

公開日:2020.02.27

 

研究成果 工学

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫。以下「量研」という。)量子ビーム科学部門関西光科学研究所(以下「関西研」という。)のドーバー・ニコラス博士研究員、西内満美子上席研究員(JSTさきがけ研究者を兼任)、榊泰直上席研究員(九州大学大学院総合理工学研究院連携講座教授を兼任)、国立大学法人大阪大学(総長 西尾章治郎)レーザー科学研究所の千徳靖彦教授、及び国立大学法人九州大学(総長 久保千春)大学院総合理工学研究院の渡辺幸信教授らの研究グループは、強いレーザー光を数ミクロン程度に小さく集光して高い強度で物質にあてたときに、電子の独特な振る舞いが発生するメカニズムを解明しました。
 強いレーザー光を非常に薄い物質に集光し照射することで電子やイオンを発生し、高エネルギーまで加速する「レーザー加速」と呼ばれる現象を起こすことができます。レーザー加速は、従来の線形加速器と比べて100万倍以上高い加速電場を生成できることから、重粒子線がん治療装置などで利用されている加速器の飛躍的な小型化につながる技術として世界各国で競争して研究開発が行われています。これまでに、レーザー光の強度を高くするほど、電子やイオンは高いエネルギーに加速されることが理論的に示されていますが、実験的にはレーザー装置の安定性や繰り返しの性能が問題となり、十分に調べられてはいませんでした。
 今回、我々の研究グループは、関西研で開発した高安定・高繰り返しの高強度レーザー装置「J-KAREN(ジェイ カレン)」を用いて、レーザー光の強度及び集光サイズと加速される電子のエネルギーの関係を世界で初めて系統的に調べました。その結果、レーザー光を集光したときのサイズが数ミクロン程度まで小さくなると、これまで信じられていた理論モデルに従わず、電子のエネルギーが頭打ちになることを発見しました。スーパーコンピューターを用いたシミュレーション解析により、集光サイズが小さくなると、光の強度が高まり電子が急激に加速されるものの、当初の理論で予測される最大エネルギーに達する前に加速が起こる領域(光電磁場が存在する領域)から外れてしまうという、特有の現象が起こることを明らかにしました。
 また、この効果を組み込んだ新たな理論モデルを提唱しました。今回得られた知見は、より高い加速エネルギーを得るためには、適切な集光サイズが必要で、従来想定されていたよりも大きなレーザーパワーが必要であることを示しており、世界各国で競争が激化しているレーザー加速器開発にとって重要な指標となります。
 今後、我々が提唱した理論モデルを用いてレーザー加速器の設計を行うことで、量研が推進する量子メス(次世代小型高性能重粒子線がん治療装置)の開発に大きく寄与することが期待されます。
 本研究の一部は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 さきがけ「極相対論的光電磁場における重元素低主量子数電子の電離機構の解明(研究者:西内 満美子)」及び未来社会創造事業「レーザー駆動による量子ビーム加速器の開発と実証」の支援のもと行われました。
 本研究成果は米国物理学会誌Physical Review Lettersのオンライン版に2020年2月27日(木)2:00(日本時間)に掲載されました。

論文情報

Effect of Small Focus on Electron Heating and Proton Acceleration in Ultrarelativistic Laser-Solid Interactions ,Physical Review Letters,
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.124.084802

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