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乳がん細胞株で高排出される中鎖不飽和脂肪酸の同定に成功

 
乳がん診断用バイオマーカーとして期待

公開日:2020.07.01

 

研究成果 農学

 九州大学五感応用デバイス研究開発センター(センター長:大学院農学研究院 松井利郎教授)は、正常細胞株に比べて、乳がん細胞株の培養液に高濃度に存在する複数の中鎖不飽和脂肪酸※1の同定に成功しました。また、これらの中鎖不飽和脂肪酸は、がん患者呼気に含まれる特徴的なにおい成分へと酸化分解されたことから、がん患者特有の呼気臭の発生との関連が推察されます。
 現在、マンモグラフィーによる乳がん検診受診率は50%以下にとどまり、より判別が簡便で、身体的・経済的負担の少ない新たな診断法が求められています。これまで本センターでは、がん探知犬ががん患者の呼気を嗅ぎ分けることを明らかにし(Sonoda et al.,Gut, 60, 814–819, 2011)、身体的負担の少ない呼気をサンプルとする新たながん診断法の確立に大きな期待が寄せられています。その一方で、呼気中の揮発性成分は、サンプル管理が難しく、がん検知犬による高感度な嗅ぎ分けを超える機器による判定には至っていないのが現状です。それに対して、本研究で明らかにした中鎖不飽和脂肪酸は難揮発性であり、尿や血液などの体液に安定に存在すること、質量分析法を組み合わせると、複数の中鎖不飽和脂肪酸を一斉かつ高感度・迅速に分析できることから、がん診断のための新たな指標成分として今後の展開が大いに期待されます。
 本成果は、2020年6月30日(火)午前3時(日本時間)に米国科学誌「PLOS ONE」にオンライン掲載されました。なお、本研究は日本学術振興会科学研究費 (JP15H01804)の支援を受けました。

(参考図)
乳がん細胞内では長鎖不飽和脂肪酸の分解過程で生じる中鎖不飽和脂肪酸が異常蓄積し、培地中に高濃度に排出される。さらに、呼気臭成分へと酸化分解されることが示された。

研究者からひとこと

九州大学五感応用デバイス研究開発センターは、本学が世界をリードする味覚・嗅覚センシング技術を基盤とし、異分野研究者の有機的な連携による学際的・学融合的な世界に類のない五感融合研究の拠点を目指しております。今回の成果はその一端であり、学際的組織である本センターならではの成果といえます。今後、尿あるいは血液を用いた実証試験と、迅速診断のための分析法の構築・デバイス化を目指していきます。(九州大学五感応用デバイス研究開発センター)

論文情報

Identification of characteristic compounds of moderate volatility in breast cancer cell lines ,PLOS ONE,
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0235442

研究に関するお問い合わせ先

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