Research Results 研究成果
九州大学応用力学研究所の内田孝紀准教授は、「RIAM-COMPACT®(リアムコンパクト)」数値風況予測モデルを用いて、北九州市響灘地区に大規模・洋上風力発電施設が導入された場合を想定した予備調査を実施しました。計算機リソースには、2015年3月に本学応用力学研究所で稼動が開始されたNEC製のベクトル型スーパーコンピュータ「SX-ACE」を用いました。
北九州市響灘地区は、「風力発電関連産業の総合拠点」の形成などを目指した「グリーンエネルギーポートひびき」事業を推進しており、現在、同地区に洋上風力発電施設を設置・運営する民間事業者の公募が行われています。こうした状況の中、下記項目の予備調査を実施し、洋上風力発電施設の導入に関して新たな研究成果を得ることに成功しました。この結果は北九州市響灘地区の洋上風力発電施設の導入に大きく寄与します。今後、特に局所的な風況面に関して、より精緻な調査・研究が必要であると考えています。
1)洋上に点在する島々、あるいは市街地が作り出す乱流(風の時間的・空間的変動)の影響
2)大規模な洋上ウィンドファーム(30基の風車群を想定)が既存の陸上風車群に与える影響
(あるいは、洋上ウィンドファームが既存の陸上風車群から与えられる影響)
3)大規模な洋上ウィンドファーム内における風車群の最適配置、経済性(発電量など)の試算
本研究は、文部科学省『ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題に関するアプリケーション開発・研究開発』における重点課題(6)「革新的クリーンエネルギーシステムの実用化(サブ課題C:高効率風力発電システム構築のための大規模数値解析)」の支援を受けて実施されました。現在、内田准教授は、このサブ課題Cに採択され、東京大学・豊橋技術科学大学・関連企業と共同で、大規模な陸上・洋上ウィンドファームの最適設計、性能評価、運用・維持管理に革新的なコンピュータシミュレーションの成果を導入する試みを実施しています。
本研究成果は10月12日(水)に東京大学で開催される第1回ポスト「京」重点課題⑥シンポジウムで紹介する予定です。
大規模な洋上ウィンドファームが導入された場合の既存の陸上風車群に与える影響(風車ウエイク)の見える化、北西の風を対象としたシミュレーション結果
今後、陸上・洋上の大規模な風力発電を適切に普及・拡大させるためには、風車の「重大事故」を未然に防ぎ、かつ風車を安全に運転させ稼働率を高水準に保つための「厳密な数値風況診断」が必要不可欠です。