します。1つの受精卵は多様な組織を構成するすべての細胞の起点となりうるという点で他の細胞にはない特性(全能性)を有します。一方で、受精卵は他の細胞と共通の遺伝情報をもつことから、遺伝情報の使い分けを規定するエピゲノムの制御が、その特性に関与すると考えられます。
佐々木主幹教授らの研究グループは、過去に得た研究結果をもとに、DNAに結合するヒストンH3タンパク質のうちのH3.3分子に注目して解析を行いました。微量エピゲノム解析法(※2)を駆使し、H3.3のゲノム上の分布を調べた結果、マウスの成熟した卵子および受精直後の受精卵(1細胞胚)では通常の細胞とは大きく異なる分布様式(非典型H3.3パターン)が観察されました。さらに、2細胞胚では多くの細胞で見られるような分布様式(典型パターン)へと変化することがわかりました。この分布様式の変化は、H3.3とは性質の異なるヒストンH3分子であるH3.1/2分子が、2細胞胚において急速にゲノム上に配置されることにより引き起こされるということをつきとめました。また、非典型H3.3パターンの意義を調べるために、典型H3.3パターンを示す胚性幹細胞(ES細胞)において非典型H3.3パターンを誘導することを試みました。その結果、非典型H3.3パターンに類似した状態を誘導した場合にのみ、受精直後に発現する遺伝子群がES細胞においても発現するようになることを見出しました。したがって、受精卵に特有の非典型H3.3パターンは、受精卵の特性を制御するために重要な役割を担うことが示されました。
本研究で明らかとなった受精卵に特徴的なエピゲノム状態やその制御機構は、全能性制御機構の包括的理解だけでなく、受精卵を扱う生殖補助医療などの医療分野への貢献が期待されます。
本研究成果は、2020年11月10日(火)午前1時(日本時間)に英国科学雑誌「Nature Structural & Molecular Biology」で公開されました。
します。1つの受精卵は多様な組織を構成するすべての細胞の起点となりうるという点で他の細胞にはない特性(全能性)を有します。一方で、受精卵は他の細胞と共通の遺伝情報をもつことから、遺伝情報の使い分けを規定するエピゲノムの制御が、その特性に関与すると考えられます。
佐々木主幹教授らの研究グループは、過去に得た研究結果をもとに、DNAに結合するヒストンH3タンパク質のうちのH3.3分子に注目して解析を行いました。微量エピゲノム解析法(※2)を駆使し、H3.3のゲノム上の分布を調べた結果、マウスの成熟した卵子および受精直後の受精卵(1細胞胚)では通常の細胞とは大きく異なる分布様式(非典型H3.3パターン)が観察されました。さらに、2細胞胚では多くの細胞で見られるような分布様式(典型パターン)へと変化することがわかりました。この分布様式の変化は、H3.3とは性質の異なるヒストンH3分子であるH3.1/2分子が、2細胞胚において急速にゲノム上に配置されることにより引き起こされるということをつきとめました。また、非典型H3.3パターンの意義を調べるために、典型H3.3パターンを示す胚性幹細胞(ES細胞)において非典型H3.3パターンを誘導することを試みました。その結果、非典型H3.3パターンに類似した状態を誘導した場合にのみ、受精直後に発現する遺伝子群がES細胞においても発現するようになることを見出しました。したがって、受精卵に特有の非典型H3.3パターンは、受精卵の特性を制御するために重要な役割を担うことが示されました。
本研究で明らかとなった受精卵に特徴的なエピゲノム状態やその制御機構は、全能性制御機構の包括的理解だけでなく、受精卵を扱う生殖補助医療などの医療分野への貢献が期待されます。
本研究成果は、2020年11月10日(火)午前1時(日本時間)に英国科学雑誌「Nature Structural & Molecular Biology」で公開されました。