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精子形成の動く波の謎を数学で解明

公開日:2021.02.16

 

研究成果 Life & Health Math & Data

 脊椎動物の精子は、精細管という細い管の中で精子細胞が成熟して形成されます。精細管は、精子の成熟パターンによっていくつかのステージに分けられます。このステージは空間的に順番に並んでいるため、時間を追ってみると周期構造が一定方向に移動する波のように見えます。
 精細管ステージが、齧歯類では分節状(図1)、ヒトではらせん状の分布(図2)であることは1980年代から知らせていましたが、なぜこのようなパターンの差があるのか理解されていませんでした。
 今回、九州大学医学部6年の河村真理学部生、同大大学院医学研究院 系統解剖学分野の杉原圭助教、今村寿子助教、三浦岳教授と明治大学の小川知之教授の研究グループは、数理モデリングによってこのパターンを再現し、分節パターンとらせんパターンの出現する条件を導き出しました。まず研究グループは、3変数の反応拡散系によって移動する周期構造を作り出すモデルを作成し(図3)、その時空間ダイナミクスを数理解析によって解明しました。次に、細い管の上でこのモデルを動かすと、どのような条件で分節パターンやらせんパターンが生じるのかを詳細に検討しました(図4)。最後にこのモデルを用いて、ヒトでもらせんパターンのみではなく、分節構造も少数ながら出現することを理論的に予測し、実際の組織でも観察することに成功しました。本研究は、今後、構造形成の分子メカニズムを解明する上での基礎となるとともに、不妊の原因となる精子形成異常を理解する一助となることが期待されます。
 本研究成果は、2021年2月15日に「Bulletin of Mathematical Biology」にオンライン掲載されました。

(参考図)
図1:マウス精細管のステージのパターン。
図2:ヒト精細管のステージのパターン。
図3:反応拡散モデルによるパターンの再現。
図4:パラメータの変化により出現するパターンの分類。

研究者からひとこと

生物学と数学の境界領域はまだ学問として若く、経験が浅くてもできる重要なテーマがたくさん残っています。本研究では学部学生が研究の主体でしたが、この分野では本人の熱意があれば研究の最前線で戦えることを示せました。

論文情報

Mathematical Modeling of Dynamic Cellular Association Patterns in Seminiferous Tubules ,Bulletin of Mathematical Biology,
10.1007/s11538-021-00863-x

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